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◆     ◆




「もうすぐ始まるねー!」

「……そうだな」



 会場は、すでに人で埋め尽くされている。

 行きは早めに入れたからよかったが、これじゃ帰りはどうなるやら。



 しかし……言ってはなんだがたかが・・・学内の音楽チームの演奏会で、ここまで人を熱狂させることが出来るものなのか。

 俺の居た世界でも、勿論もちろんこうしたイベントは行われていた。

 だがせいぜい、同業者である音楽ばたの人間が客として集まる程度ていど

 学生の身分で様々な世代から注目を集めるのは、余程の巡り会わせと努力、そして運が無ければ難しいだろう。



 ウィザードビーツとは、それほどにすごいグループなんだろうか。



「あ、あそこ見て。ケイ」

「?――、」

「マリスタ達、だよね。エルジオ先生も一緒」

「……そうだな」

「仲良さそうだね」

「そうか?」

「気になる?」

「別に」

「わ……私達も見られてるかな。どんな風に見えてるかな。きっとマリスタにも、私達がカ――」

「どんなグループなんだ?」

「――どんなって?」

「ウィザードビーツ。小さな会場とはいえほぼ満員に出来てるんだ。よほど人気のグループなんだろう」

「その通りだよ。卒業と同時に、学外でもデビューが決まってるんだって。ていうかケイ、ホントに見たことないんだね、ウィザードビーツのリリスちゃん」

「興味のないものを一々いちいち見る必要がないだろう」

「まあまあ、そう言わないでまず見てみようよ。プレジアのアイドルみたいなものだから」

「アイドル……しかも女なのかよ」

「え、それも知らなったの? ほんとトコトン興味ないんだね……じゃあ、顔も見たこと無いの?」

「ないな。何年生なんだ?」

「え……その質問は言い過ぎなんじゃないの? だって同じ六年生で、リリスちゃんも義勇兵ぎゆうへいコースなんだよ?」

「そうなのか?……みょうだな、授業で一緒になった記憶も無いぞ」

「……え、えんが無かったんだね……」

「まあ、間違っては無いだろ。これまでもこれからも無縁だ、アイドルなんぞ」

「とか言って、見た瞬間骨抜きになっちゃヤだからね。リリスちゃん、すっごく美少女なんだから」

「美少女だろうがブ少女だろうが興味はない」

「もう……はい、パンフレット。これがウィザードビーツのボーカルで、プレジアの歌姫うたひめ――リリスティア・キスキルちゃんだよ」



 パールゥのショルダーバッグから取り出される、折り目一つないパンフレット。

 二つ折りにされたそのパンフレットの表紙、ほうきに乗った魔女のシルエットが白抜きにされ、星と共に夜空に浮かんでいるデザインの下に、














 その姿は、あった。














「…………………………パールゥ。演者の控室ひかえしつはどっちだろう」

「え? 分かんないけど、たぶんステージの裏側とか――――」



 英雄の鎧ヘロス・ラスタング



「――――って!!!? ちょ、ケ――――」

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