2
「いや、動揺というよりも」と、ホワイトローブはあっけらかんとした口調で続ける。
「変化している、のかもね。アルテアスさんや、ハイエイト君と同じように。君はどうなの?」
「――は、」
(――僕が、なんだって?)
「……
「……謝らなくていいですよ。謝罪の気持ちなんてないでしょう」
「怒ってるねぇ、僕に対して君がそんなことを言うなんて……これでも申し訳ないと思ってるんだけどなぁ。伝わらなくって困るよ、
「………………」
きっと自分に向けられているわけではない言葉を無視し、少年はスペースを見る。
スペースには、ナイセストの「
(……アマセは、キースさんとも戦ったと聞いた。……僕とやり合った、ほんの二週間後くらいに)
少年が拳を握り締める。
自分、ヴィエルナ、そしてナイセスト。
とんとん
(ティアルバーさんが変わってきている。この状況に……ケイ・アマセが起こした行動によって、
「……どうして。どうして、僕は」
「ん? 何か言った?」
「…………いえ」
しかし、広がり始めたどす黒い感情は留まるところを知らない。
ただただ少年の中で、水にたらされた絵の具のように少しずつ、確実に広がり、
「…………ッ」
――僕と同じ舞台に立っていたあいつが、ティアルバーと対等になれるのなら。
自分だって、対等になれなければ嘘ではないか、と。
「身の程知らずだよね」
「え……」
「アマセ君のことさ。普通は、自分とは立場の違う人とか、なんとなく苦手な人とか、
「良心の呵責……」
「一番自分を精神的に追い詰めるのはある意味、自分だからね。でも、彼はそれにだって苦しまない。まるで心がないみたいに。僕それ、心底恐ろしいと思うけどね。人間味が全く感じられないじゃないか。――――彼だって、恐ろしくない
「……恐れ」
(……僕は、身の程をわきまえていた)
少年が、再び拳を握る。
(だって僕は――僕は、恐ろしくてたまらなかった。ティアルバーが、)
対等になれなかったのでなく、
(……ケイ・アマセが)
◆ ◆
「い、いい加減泣き止みなさいっての、あんたはもうっ! よーしよしよし!」
エリダはお手上げ、といった風情に降参の意を示し、力無く笑ってみせる。
その肩に、長い金髪に
彼女の目には
「う。うん。あの……ごめん。私も、あんたなんかの胸をいつまでも借りてたくなんてないんだけど」
「はったおすわよこのバカ娘?! だったらとっととはーなーれーなーさーいーよこのッッ」
「ううう~~っっ!!」
肩を揺さぶって引きはがそうとするエリダ、だあだあと涙を流しながらしがみつくマリスタ。
パーチェ・リコリスはそれを横目に小さくため息を吐きながら、目の前の
「気分はどう?」
「は――はい。だいぶよくなりました」
そんなパールゥから視線を戻し、リアも
「十中八九、
「だいじょぶー!! シータに守ってもらったからっ! ありがと先生っ、ありがとシータ!! すりすりー!」
「ゎやっ??! ちょ、ばかじゃないの、くっつくんじゃっ……」
とっさに
それを冷めた目で見ていたナタリーが――視線をシスティーナに移す。
「システィーナ。あなた、あれだけの魔波を浴びてよく無事でしたね。障壁も展開していなかったのに」
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