9



 他のブロックにいた者達が残らず第二ブロックへと振り返り、熱波ねっぱのように荒れ狂う蒼穹そうきゅう紫紺しこん魔波まはの激突を真正面から浴びる。



「きゃあっ!!?――――ぁ、」



 突風のようにぶつかってきた魔波によろけたパールゥを背後から片手で抱きめ、けいが少女たちをも包む魔法まほう障壁しょうへきを展開する。

 暗色の光が明滅めいめつしながら観覧かんらんせきへと押し寄せ、会場の床をまだらにいろどる。



 その発生源には、紫電しでん白光びゃっこう内包ないほうした一条いちじょう先鋭せんえいを持つ雷槍らいそう


 それに真正面から応ずる、咆哮ほうこう音圧おんあつきばごとかたどり雷槍に食らい付く三叉さんさ巨槍きょそう



 矛盾水と雷は、ここに再び拮抗きっこうしていた。



「ぬうぅぅうううううあぁァッッ!!!!」

「ああぁぁぁあああああぁァッッ!!!!」



 裂帛れっぱくの気合が、相手の魔力のかたまりを押し切らんとほとばしる。

 スペースを極彩ごくさいが飛びい、その絢爛けんらん魔力回路ゼーレが発する神経にさわる痛みに、両者はたまらずかざした腕をつかみ、奥歯をむ。

 ロハザーが押され、その両足が飛ぶように後退する。

 マリスタの手をおおうローブのそでが魔波の圧に耐え切れず、風化ふうかするようにくずれ消えていく。



(だが、ここが――――)

正念しょうねんッッ!!)



 無論むろんだ。



 彼らに最早もはや、勝利以外の終息は無い――――!



『おォオァぁああああああああああ――――――――ッッ!!!!!』















 ――――――――ロハザーは、我が身と同じく対面の壁に叩き付けられているマリスタを見る。



 彼女もロハザーをている。

 互いに視界をかばっていた両腕を外し、神経を伝い来るとてつもない頭痛、焼き切れそうな魔力回路ゼーレ疼痛とうつうに耐える。



「――――どうしてそこまで変われたんだ?」



 知らず、灰色が問う。

 赤色は全神経を動員し、なんとか口を笑みに曲げ、つぶやいた。



「変わってないよ。これが私だもの。――――そう、ケイは私に気付かせてくれた」



 赤の口から、一筋のあかが伝う。



「――――――――」



 放心したように立ち尽くすロハザーの視界の中で、マリスタは地に伏していった。



「、っと……」



 監督官、トルト・ザードチップが降り立ち、マリスタの前でしゃがんで彼女をる。



 ややあって立ち上がり、手刀しゅとうの要領で片手をロハザーに向けた。



「マリスタ・アルテアス気絶。よって勝者、ロハザー・ハイエイト」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る