蜜愛トキシック

あゆざき 悠

プロローグ

 ついにこの日が来たと思った。彼の左手が彼女の頬を撫でながら唇をそっと奪う。そのままベッドにすとんと腰を落とした。ゆっくりと仰向けに倒されていく瞬間、彼女は自分の手が宙を彷徨っていた。

(どうしよう? どうしたらいい? 初めては痛いって。ううん、それよりも上手にできなかったらどうしよう? 嫌われちゃう?)

 彼女は不安が膨れ上がり、彼のキスにも上手に応えられない。

「大丈夫。俺に預けていいよ」

「あのっ、でもっ」

「うん、無理だったら言ってくれればいい」

 彼はいつもの優しい笑顔を向け、彼女の額にコツンと額を押し当てる。彼女はそっと視線を伏せ、彼の袖を掴んだ。

「大好きですっ! だ、だからっ」

「うん、俺も好きだよ」

「上手にできなくても、嫌いにならないでくださいっ!」

 少し潤んだ瞳の彼女がそう言い、彼は大きく目を見開いた。

「まったく、君は――本当に可愛すぎて困るよ。俺をどこまで惚れさせたら気が済むの?」

 彼女は溺れるまでと言いたかったが、その口は彼のキスによって塞がれた。彼のキスがいつもと違った。優しく彼女の唇に重なるだけではない。顎をそっと引き下げられ、彼女の口を開かせる。するりと彼の舌が滑り込み、彼女の舌が囚われた。彼女は戸惑いながら、彼の舌に絡める。

「んっ、いい子だね。俺のキスを覚えて」

 下唇を吸われ、また互いの舌が絡み合う。それだけで頭の芯が痺れていく。ワンピースの上からそっと胸の膨らみをなぞられ、彼女はビクッと震えた。怖いと思ったのは一瞬だけだった。

「脱がすよ」

 彼の言葉に彼女はギュッと目を閉じた。ワンピースのファスナーが下ろされ、彼女の肩が緊張して強張る。その肩に彼の唇がそっと押し当てられた。

「俺を最初で最後の男にしてくれる?」

 彼の言葉に彼女は驚いて目を見開いた。

「それって――」

「君は俺の最後の女」

「本当にいいんですか?」

「うん、俺は君以外、誰も愛せない」

 ジッと彼を見つめると、彼の瞳に自分が映っている。

「私も」

 吐息を多く含んだ彼女の声は掠れてしまった。彼の唇がもう一度、彼女の唇を奪う。彼女は緊張して心臓が壊れそうな音を立てていた。

 そんな彼女の唇から彼の唇が離れ、首筋をそっと舌で舐められた。

「ひゃんっ……ふふっ、くすぐったいです」

 彼女は少しだけ緊張から解き放たれた。

「くすぐったいのか」

 少し残念そうな彼の声が響いた。彼女の鎖骨に舌を這わせ、それから鎖骨の下に唇を押し当てられた。

 キュッと皮膚が引っ張られる痛みを感じたが、彼女は声を押し殺した。ワンピースをゆっくりと脱がしながら、ブラジャーのホックを外された。

 彼女は胸元を両腕で覆ったが、彼はそっと彼女の手を握る。ゆっくりと開かれた胸に彼の顔が埋められ、谷間や膨らみにキュッと痛みを伴うキスを落とされる。そして膨らみを優しく揉みながら、尖った先端を避けるように周りを指と舌でなぞる。

「あぁぁっ……!」

 思わず漏れてしまった甘い嬌声に彼女自身が驚いた。

(や、やだっ! 私――)

 恥ずかしいと思った瞬間、彼女は自分の口を手で覆った。

「こら、ダメだよ。君のその可愛い声が聞きたくて焦らしているんだから」

 彼の手が彼女の手をそっと口から引き離し、その唇にキスをした。

「もっと聞かせて。俺しか知らない君の可愛い声を」

 そして彼は彼女の胸に顔を近付けると、舌と指でその先端を愛撫する。ゆっくりと彼の右手が彼女の太腿に触れる。太腿を優しく撫でながら、彼女のショーツを脱がした。

「もっと俺だけを感じて」

 彼の声が響き、彼女はうまく返事ができなかった。

「あっ、あぁっ、ひゃっ……」

「可愛い、ここはどう?」

 彼の指が彼女の蜜を絡めながら、蜜口を撫でる。指で肉襞を掻き分けるようにして彼女の中に入っていく。

「んんっ、あぁぁぁんっ……キモチっ、イイっ……ですっ」

 彼女の言葉に彼は、上部の固い蕾を指で擦る。

「あっ、やんっ、 それっ、あぁぁぁっ、なんか変っ!」

「ん、ゆっくり受け入れてごらん」

 彼はそう言い、花芯を剥き出した。指で強弱を付けられながら擦られ、彼女の中に入った指が動き始める。ビクンっと大きく彼女の腰が波打った。

「うん、ちょっと待ってね」

 彼の言葉にゆっくりと頷いた。彼女の淫口に押し当てられた熱い杭は、ゆっくりと彼女の中に入ってきた。

(うぅ、痛いっ)

 彼女は言葉にならない痛みに襲われた。

「ゆっくり息を吐いて」

 彼の言葉通り、彼女はどうにか息を吐いた。何かが引っ掛かって引き攣ったような痛みが彼女を襲う。彼の腰がゆっくりと動き、徐々にその引き攣った痛みが緩和されていく。

 何度もキスをされて、優しく頬を撫でてくれる。彼女が手を伸ばせば、彼の大きな手が包み込んでくれてギュッと握ってくれた。

「いい? もう少し動くよ」

「んっ、はいっ……」

 少しずつ痛みから快感に変わっていき、彼女は初めての感覚を受け入れた。彼がぎゅっと抱きしめてくれて、そのまどろみの中で彼女は呟いた。

「彼女にしてくれてありがとうございます」

 彼女は彼の腕の中で眠ってしまったようだ。

「彼女にして? 違うんだけどなぁ」

 彼は喉を鳴らしながら笑い、彼女の額にキスをした。

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