『刺激』

 頭が痛い。


 鈍痛どんつうというのだろうか。ズキズキとした頭痛ではなく、じんと違和感のようなもので脳みそが浸されている感覚がする。


 ようは、思考力が落ちた気がする。


 身体の感覚がとてもにぶい。


 体が重いわけじゃない。ただ鈍いんだ。


 脳の電気信号がうまく届いていないような、遅延しているようなそんな感覚に襲われる。


 なにも考えれれない。考えるのをやめてしまうと、ほんとうに思考がストップしてそれまで何をやっていたのか、何を考えていたのかが途端にわからなくなる。


 怖い。怖いよ。


 指先の動きが鈍い。


 とても意識の力を働かせないと、もう体を動かすことすらできない。


 家から出ることすら億劫になる。


 朝起きることが難しい。何時に起きたいとか、考えることもできない。


 ベッドから起き上がって、パソコンをつけてzoomに入って授業を聞いて、飯を作って、シャワー浴びて考えて、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて。


 それの繰り返し。課題をやる。飯を作る。酒を飲む。たまに人を呼ぶ。酒を飲む。どうでもいい話をする。


 その繰り返し。


 反復可能な毎日。反復可能な世界。


 気がつけばおかしくなっていた。


 もう、それ以外のことをする気力もなくなった。


 脳も結局は筋肉だから使っていないと衰えてしまう。


 そういえば筋トレをしなくなった。


 自分に負荷をかけなくなった。


 かけなくなったというより、負荷をかけてもその負荷に耐えられなくなった。


 成長とか、頑張るとかを一切しなくなった。


 これじゃまるで植物だ。何をする気も起きないインテリア。


 わかるのは空腹と目の疲れだけ。


 飲み会を開いた。ある程度仲のいい人たちを呼んで、久々に居酒屋にいった。


 楽しかったのだと思う。よくわからない。楽しさってのは楽しい雰囲気に浸るから感じるものであって、継続されるものじゃない。


 楽しいと感じていながら、そこまで楽しさを感じていなかった。


 よくわからないけど、楽しさを感じている自分を隣で冷めた目で見ているオレがいて。それを楽しんでいる方のオレも知覚して、賢者タイムに入る。


 すべての体験に対する結論は疲労。


 楽しかった出来事も疲労で片付いてしまう。


 酒を飲むことも、つまらなくなった。


 酒では満足できない。オレは刺激がほしい。


 脳天ぶち抜くような、目が焼き切れるような。


 そんな頭を釘でがつんと穿つような刺激がほしい。


 アニメではダメだ。目が疲れる。演説も音楽も、鈍感な脳ではうまく聞き取れない。


 小説だ。目に焼き付けるような刺激のある小説。


 文字というものは考える上で非常に重要なツールだ。


 考えをその場に、視覚的に立体的に保存することができる。


 文章で死にたい。


 ひとを殺す文章はこの世にあるのだろうか。


 ひとを殺す小説はこの世にあるのだろうか。


 誰かのエゴや剥き出しの感情が文字っていう刃物になって、オレの首を切り裂いてほしい。


 頭を爆発させてほしい。


 鈍いオレが、鈍いままじゃいられなくなるようなそんな小説がほしい。


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