『ねぇ。』

 お前にオレの何がわかる、とかそんなこと言うつもりは毛頭ない。


 他者理解なんて不可能だし、そんなことをいっても仕方ないのはわかってる。


 だから触れないでほしい。どうか近くに寄らないで欲しい。


 せめて、あまりにもその幸せそうなツラをオレに見せないでほしい。


 見てて虚しくなる。なんでオレにはそれがないんだろうって。


 なんで、オレはいつも独りなんだろうって。


 当たり前のことを再認識してしまう。


 だからどうか。どうか…そっとして欲しい。


 あわれんでもいい。でもせめて眺めるだけにしてくれ。


 頼むから。冗談でも救いの手なんて、差し伸べないでくれ。


 そんな腕じゃ、オレを支えられない。


 生半可な覚悟じゃ、オレはあなたを傷つけてしまう。


 枯渇した喉にはありったけの水が必要なんだ。


 少しずつじゃない。ありったけ。


 でないと、今まで我慢していたものがおさえられない。


 本能的に、衝動的に、オレは凭れてしまう。しがみついてしまう。


 助けの手なんて差し伸べられてしまったら、オレは正気を保てなくなる。


 もう自分の脚で立つことを、止めてしまう。


 それが依存だということは一番オレがわかってる。


 誰も望んじゃいない。


 だから、やめて欲しい。


 変な希望を抱かせないで欲しい。変な期待を与えないで欲しい。


 最初から踏み入る気がないのなら、はなから手なんて差し伸べないで欲しい。


「いつでも相談にのるよ」なんて、呪いの言葉だ。


 君たちにとっての「いつでも」はオレにとっては毎秒なんだ。


 いつか、我慢なんてしなくても存分に甘やかしてくれる人がいるなら、それでいいのかもしれない。


 でも、残念ながらいまそんな人はどこにもいなくて、出会える保証もない。


 だからやっぱり、自分で処理しなきゃいけないんだよ。


 でももはや、それすらできなくなったなんて。


 じゃあ、どうすればいいんだよ。


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