『自慰』
たぶん。おれの「たすけて」は、すぐに取り消せる「たすけて」なんだと思う。
その証拠に、それがだれかに届くまえに、おれがおれを殺し切ってしまう。
一度死んだらリセットだ。朝を迎えれば「たすけて」を考える暇もない。
だからチャットボタンの取り消しを何度もなんどもタップする。
だってその「たすけて」はもう使えない。
諦めの目。諦めの思考。そもそも誰かが助けてくれるなんて思うのが、悪い。
ひとはひとを助けられない。救えるのはじぶんだけ。
なんどもなんども。
いえない「たすけて」
届かない「たすけて」
もっとひとに頼れといわれた。もっとおもてに自分をだしていいと。
でも、そんなことはできなきくて。
だってみんなやさしいけれど。やさしいぶんだけ脆いんだ。
ひとにやさしいぶん、みんなよわい。
おれの「たすけて」は人をあやめる。
だれも救わない呪いのことば。
だからやっぱりおれは、じぶんでじぶんを
その方がラクだ。どれだけ自分が辛くなっても、実質誰も傷つかない。
ひとに傷つけられるくらいなら、じぶんでじぶんを痛ぶったほうがマシだ。
そうして積み上がった「たすけて」の死体。
たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて。
そんなもの、ふつう受け切れるはずがない。そんなもの、誰も欲しくない。
「たすけて」に圧死する。
——ああ、それでも。「たすけて」をいいたい。
だからだれか。おれをたすけてよ。
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