『彼女のみ見える空の色が俺にも見える件。』

@yun2g01

第1話

学園ものです。


心理テスト :


Q、空は何色に見えますか?


1、水色(空色)。


2、薄い曇り空の白。


3、サンライズやらサンセットやら。(曉の色)


4、星々の流れる夜空。


5、日照の白んでくるグラデーションの青空。


6、雨降りでその匂いのする、空色。


7、虹の掛かる雨上がりの晴天。


A、ないしょ☆


***********************


立春も過ぎた。


季節の変わり目のその時期。


今、俺は最寄りの駅に向かってる。


市立公立の一般受験の合格発表を見に行く為だ。


推薦の話もあったのだが自ら断った。


自分の学力を試したいと担任には伝えた。


今思えば学校の勉強ってどれだけ社会に出て役に立つの?甚だ疑問だが中坊では知るよしもない。


中学では、貧乏で少々みすぼらしい女子が男子で、虐めっ子の恰好の餌食となって、先生に進言をしたり、仲間を数人集めて、止める様、諭したりしても一時的だった。


学校の虐めが止められなかったのも一因ではあった。


僕の、登校拒否の理由である。


高校は通信制のところの推薦状があっさり担任の先生が出してくれた。


必要なテキストはきっちり自宅でこなしたので、特に、文系の英語、社会はクラスだったか?学年だったか?トップ、理系はどうしても満点が取れないので2番程度までだった。


通信制度の高校であれさえすればどこでも良かったので適当に恩師が選んでくれた。


ちなみに地元では有名なバカ高のくせして倍率だけは高い学校で一般にも数名受験者はいた。


だが、別段仲良くもないのと中学校まで移動が面倒なので、連れは断った。


駅までは中学生ならば徒歩で十分な距離だ。


普段はクールを意識してつれない人等と皆から一匹狼の様な扱いだ。


連れから、第2ボタンを開けるとモテる等と嘯かれてやってみたこともある。


だが、一人でやってたら浮いちゃって女子からヒソヒソ噂話をされた経緯があった。


それは、もうやらない。


ちなみに、そいつも先に一人でそれやって、担任に服装チェックをされたらしく巻き添えみたいなもんで散々だった。


高校は通信制のところの推薦状があっさり担任の先生が出してくれた。


必要なテキストはきっちり自宅でこなしたので、特に、文系の英語、社会はクラスだったか?学年だったか?トップ、理系はどうしても満点が取れないので2番程度までだった。


通信制度の高校であれさえすればどこでも良かったので適当に恩師が選んでくれた。


話が、大分変わってた。


そんな俺でも合格発表の結果待ちの動揺はあるに決まってる。

一人で良かった。


駅の電車の待ち時間に缶コーヒーを買うつもりがコーラを押してしまった。


さすがに動揺が過ぎる。深呼吸、軽いストレッチで流す。体育会系でもある。


そうこうしているうちに電車が来て乗って目的地に向かう。


高校の最寄り駅付近から大分騒がしい。


気にせずスタスタ向かう。


合格発表の掲示板が見えてきた。


同中は見当たらない。助かった。


ポッケから番号札を取り出して、4桁の番号の再確認。


動悸がしてくる。


「俺の番号、、、」


・・・


「あ、あった。」


見間違えてないか確かめて、合格を噛み締める。


「ぃ~っしょっしゃ~!」とやりたいところをおさえて笑顔で帰る。そのつもりだった。


そこに二人の女子が目についた。


一人は、「やっぱりだめだったわ~。すべりどめも期待してないし。中卒でどないしょっかなー?」


もう一人は縁の細い眼鏡をかけていた。終始無言。


「、、、。」


一言もしゃべらない女子とちらっと目が合った。


見られてるのに気付いたのか、恥ずかしそうに目をそらす。


女子とさらっと話すのは苦ではないので声をかけてみた。


「よぉ!俺北中出身。どうだった。」


一応、大方予想はついている。


「うちら?東中出身やねんな。」


ちょっと中国語?関西弁?お国の分かりづらいイントネーションの入った子が喋り出す。


「この子受かって、うちは落ちてんねん。そうなると、同級生やね。仲良うしたってや。あー、そうそう、この子あんま体が丈夫にできてないんや。行きもしんどそうやったし。ちょっと頼んで良いかな?結局、学科で落とされたんやろうなー。もううちもさすがにショックやねんで一人になりたいんや。」


気持ちは良く分かる。了承をした。


手の届きそうな少女という感じの顔立ちをしてる。


取り合えず。


「合格おめでとう。って、俺もなんだけど。」


彼女は頷くだけ。


「入学式の日程は。さっき丈夫にできてないんや~ってあのこ言うてたし、付き添おうか。家はどっち?駅まで一緒?」


無言で駅の方向を指す。


てくてく歩きながらやっと喋りだした。


「受験は頑張って良かった。でも、ここまでくるのがしんどかった。」


そんな虚弱体質では交通機関も辛かろう。


この当初の母校は一般試験の倍率だけは少なくとも市内では、一番、二番を争う。


要は、千差万別な学歴で高くはない者でも集まる。


とは。言えども、全く勉強をしなかった者が受かるほど甘くはない。


早い話、学科に寄りだ。


まー、とかく人気の高校。


合格で受かれてたのもあったのかもしれない。


その子の家は市内なのでんなに遠くはないし、タクシー代は出すからとの提案で移動をすすめた。


初対面の方にそんな御迷惑をといいつつぼんやりしてるので何となく心配で使うことにした。


駅側で、いつもの虎猫タクシーを呼ぶ。


乗車をして何か会話でもと思い質問には答える。


学科は、美術の専攻。


一般の方の学科である。


僕はというと、普通科か商業かどっちでも良かった。結局は、通信にした。


だが、自分からは何も殆んど喋らない。


一言だけ。質問をされた。


「そらってなにいろにみえる?」


「?、、、そうだなー。天候でも随分変わるし、真夜中は月明かりが有れば黒が濃い方の紺にも見えるね。?朝が白むっていうだろ?サンライズ、サンセット、曉も、曇り空、それから雨上がりのグレーが晴れて、虹がかかると7色やら言うだろ ?お国によって色数が違うらしいね。虹って、綺麗だよなー。」


一瞬、何かの心理テスト?思った、

だとしても俺は心理学にもちょっとは詳しい。


「えっと、俺はアダ名がジョンでそれまで。気の知れた相手以外に馴れ馴れしくされるのが嫌で名乗りたくないんだよ。」


「そうなんだ。」


反応が希薄だ。


「えっと、なにちゃん?」


「、、、めぐみ。」


「めぐみんは、何色に見えるの?」


「、、、、、、宇宙(そら)。」


一応、聞こえるか聞こえないかのか細い声で答えた。


なるほど。この子って、もしかして努力家?でもって、或いはちょっとは賢いのか?


市立で公立の桜が丘に一般入試で受かるぐらいだから最低限の義務教育の勉強ができるのは確かだ。


彼女は、中学で配布をされた5科目の、特に得意分野の数学、理科、社会科の丸暗記を中心に頑張ったと話した。


漢字の画数の多いのがこの頃は苦手だったらし。


数字を扱う方が得意だと言ってた。社会科の地図記号や、特に音楽の記号が覚えられずに、音符の記号を見ると頭痛がするらしい。


僕も、彼女と同じ文系。


彼女は、文系の美術一本。


彼女は、算数は小学校のテストでは、殆んど100点を取ってた。


だが、数学の因数分解迄で、そこから徐々に出来なくなったらしい。


僕も、英語を得意とする。


音楽は、ピアノとクラシックギターが出来。


理系の人は、頭の作りからして違うらしい。


彼女は、英語は興味があったのに、単語のスペルの文字数が増えるとしょっちゅう間違えて正しく覚えられない。


接続詞の和訳も同様で当時は苦手科目に分類せざるを得なかった。


得意な方に専念をしたと語る。


マトモに義務教育が受けられなかった。


それで、短期講習の塾に通わせてもらったりした。


後々になって、どのみち眠いだけだから塾でも集中出来なかった。


そう語る。


彼女は、感情等を表現をするのに絵画で行う。ネットの職業適正診断なんだけども~1芸術家~若しくは~哲学者~(生き方を人に説く。)タイプだろう。政治家とも違う。


後で調べた事なんだけども。


哲学の基礎ならば、西のソクラテス。東の釈尊。

語りたいならば、此れぐらいは出てこないとって此れは持論でもある。


試しに、物理、化学(科学)の分野。

元素記号は覚えて仕舞うしかないので、H、He、O、以外はうろ覚えらしい。


例せば、月明かりを物理学的或いは、科学的な証明を求めたら、一応知ってた。

答えは、恒星たる太陽から5000000㎞離れて届く熱エネルギーが、衛星たる月に到着をした時に光のエネルギーに変化して惑星たる地球へ到達するのが月光。星そのものが光を発するのは恒星だけである。


大体、そんな感じ。


ニュートンの万有引力の理論。

アインシュタインの相対性理論。

ガリレオ・ガリレイの地動説。(天動説は割愛をさせて貰う。)

一部は、名前だけ知ってた。


ま~、この子は、少くとも俺の知る同中の自分等でバカ呼ばわりする世話のねぇ連中とは少し違う気がする。


雑学だが馬鹿の本来の意味は少し違って、大体のことは司馬遷の史記に記してある。


四文字熟語ならば酒池肉林やら、四面楚歌やらetc...そういうの。


「空の色を通して宇宙の色が見えることもある、ってとこかな?おっと!」


そんな会話で到着。してしまった。


最低限、名前とスマホの連絡交換をした。


その彼女の自宅を聞いて、タクシーを止めた。


小声で「送ってくれて、ありがとう。」聞こえるか聞こえないかの声でふわふわした感じで市営の住宅の家に入った。


市内だがお金が足りなかった。

親には病弱っぽい女の子を送ってと正直に言ったら理解を示してくれて支払ってくれた。


不思議な女の子だ。


その日はそういう印象しかなかった。


晴れて入学式の当日。


クラスを確かめたら自分のクラスはあった。


だが例の彼女の名前が何度見返してもない。


気になるので職員室に行って聞いたところ、確かに滑り止めにも二高受かったけども、ここの生徒であるらしい。


どうやら彼女の親からの意向で特別クラスに入れてもらえないかとの話で少々学校側も困ってるらしい。


後日、結局は普通学級で頑張ってみるということで隣のクラスに編成された。


授業の初日に授業終了のチャイム同時に彼女のクラスに行ったら後ろの席でぼーっと外を眺めてた。


「元気してたか?初日はどうだった?」


「初日からお昼頃まで遅刻した。怒られなかったけど。今日も疲れた。」


「昼飯は?」


「学食のアップルパイ、水道水。」


「足りるのか?」


「いちおー。」


彼女は見るからに華奢である。


「ちゃんと食ってんの?」


「お腹すかないよ。いつも眠いだけ。」


段々、心配が募ってきて、流石に今日は付き添って交通機関で送ろうと思った。


「何か食うもんを買ってくる!待ってろよ!」


言い残して1等近いコンビニに走る。


コンビニのホット・スナック、ヨーグルト、炭酸飲料を適当に選んで、ちょっとした時間でも眠る彼女を起こしてそれらを渡した。


もくもくと食べる彼女を見てても義務的に食べてる様に見える。


一応の完食はしたが眠そう。


のそのそと椅子を並べて眠ってしまった。


なんと無く放っておけないのでいつも持参してる勉強用。


小振りの英語の本。ラノベ、愛読書とも言えるを読んで起きるのを待ってた。


医務室で布団でもと思ったが、比較的暖かいので学ランを羽織らせておいた。


彼女は日没近くでも起きない。


用務員のおじさんに閉鎖時間をいわれて、致し方なく彼女を起こした。


学ランに気付くが、御礼はいいからと移動を始める。近所に公園があるのは知ってたので、連れていく。


ベンチに二人して腰かけると倒れる様に膝枕にされてしまった。再度、学ランを掛けてやる。


日没も近いのに未だ起きない。


ワイシャツでは俺が寒いので起こしてみるが、本当に眠いだけという感じだ。


歩かせてもふらふらしてるので、おんぶをしてあげる。また眠る。


駅のホームのベンチでも膝枕。


一体全体どういう子なのだろう?


親が心配をするだろう。


このまま家に帰すしかないので交通機関以外はおんぶで運んだ。


自宅についたらさすがに華奢な子でも長時間のおんぶはキツいので自宅でバタンキューだった。


翌日は俺が遅刻をしたが彼女は学校に来てなかった。その翌日も。半月以上は通学をしてない。


いよいよスマホにかけてみた。


「、、、おはよう。」


「おはようってもう昼も過ぎてるぞ。」


「、、、眠い。」


「丈夫にできてないは分かるがおかしくないか?」


「何が?」


「ほとんど学校に来てないで。単位はどうすんの?」


「私、美術専攻なの。絵が描ければ単位は、多分大丈夫。」


「何かの病気なの?」


「分からない。」


「、、、めぐみん。だよな。」


「ジョンくんはアダ名だよね。」


「明日、学校これたら来いよ。」


「うん。分かった。お休みなさい。」


電話が終わったならば眠ったのだろう。


翌日も、暫く学校に来なかった。


とある夕方、フォーマルで彼女の家を訪れた。


インターホン



「はーい。」


おそらく母親の声。玄関が開く。


「あら?男の子?」


「なんだ?誰だ?」


「はじめまして。僕、同級生の隣のクラスの者です。」


おそらくは父親の声だろう。


「何しに来た?」


「あの同級生なんですけど、桜ヶ丘高校合格の御祝いと、担任の先生から出席日数の事で、僕が行きますといいまして、その、、、。」


適当でしどろもどろである。


「ふーん。分かった。おそがけではあるが、まぁ、上がれ。」


上げてくれた。


だが、彼女は居たのだが風呂上がったとこだった。


実は、家での普段着はピンクの薄い柄物のパジャマだったらしい。


彼女も突然の訪問に少々驚いた様子だが、いつでも眠い方が先行をする


「せっかく来てくれたのに悪いわね。さ、めぐみちゃん。お部屋で休みましょうね。」


彼女は、自室のベッドですぐに眠りについた様だ。


お父さんもパジャマで酒と野球の観戦が趣味らしくテレビとラジオの中継を観て聞いていた。

自宅にパソコンはないらしい。


「お!塁に出たな!」「バントの構えか、、、」「よし!フライだ!」「一点いったぞ!」「今日はホームランだ!」「あー!点を取られた。」


ずっと一喜一憂していた。選手にもやたら詳しい。


僕は小坊のクラブの草野球のセカンドの守備だった。


だが、そこまで詳しくはないけどもバッティング・センターに行くことも稀にある。


お父さんは監督の様に観る専門らしい。


応援球団がコールド・ゲームらしくえらく機嫌が良い。


「いや~お前が来てくれくれたから今日は調子が良いな~!」


「ジュースでもあったかな?」


「食べてって。」


夕飯には親父さんの酒の肴の残りの刺し身、豚肉の炒め物、ご飯、トマト、ポテトサラダ。


飲み物は、ほうじ茶?珈琲?紅茶?ジュース?どれ?聞かれて、ジュース。答えた。


水でも良かったんだけど。せっかくなのでお言葉に甘える事にした。


「勝った勝った!よし!俺は寝るぞ。」


そう言って結構酔った感じの親父さんは寝に入りドアを閉めた。


母親は「泊まってく?」


聞かれてそのつもりはなかったのだがそういう流れになった。


親には、スマホで「友達の家に一泊だけ泊まる事になった。帰るときは此方からも連絡をする。」心配をさせない目的で、連絡をした。


お父さんの替えのパジャマをすすめられたので、せっかくなのでお借りすることにした。


熟睡してる彼女のベッドの下に布団がしかれてその間、水を飲んで布団に入った。


健康な男子なので彼女に何かをと思わなくはない。


違和感を拭えないし、責任がとれないことは出来ない。結局、そのまま眠ってしまった。


翌朝は土曜。学校はないが、朝食にご飯と味噌汁まで御馳走になった。


親父さんからは「今度飲みに行こう。」と誘われ割りと好印象。


スマホとテレビで時間の経過を待ったがまだ彼女は起きない。


「めぐみちゃんは起こさないと起きないわよ。」


15時も過ぎた頃。「めぐみちゃん。めぐみちゃん。まだ、アダ名、ジョンくんだっけ?いるよ。」


「、、、」


「はよー、、、」


じゃあ今晩の買い出しがあるから。お父さんは日が暮れる前後にかえるんじゃないかしら?」


「うん。いってらっしゃい、、、」


お人形さんが喋るみたいだ。


母親はそう言って夕飯の買い物に出掛けた。


「あのさー、、、」


「何?」


「俺はお父さんが帰る頃には出るな。」


「うん。」


まだ眠そうに返答してる。


「あのさー、、、」


「なに?」


「どうしていつも眠ってるだけなんだ?家でも學校でも野外でも交通機関でも。」


「分からない。眠いから、眠い。」


「そうなんだ。」


「昨日は何食った?」


「カロリーメイトの何味だったかな。財布に1、000円が入ってたから。その前がうまい棒のたこ焼き。小銭しかなかった。多分、500円もなかった。」


「たったそれだけ?」


「カロリーメイトは高かったよ。贅沢かなぁ?って思って買った。」


コンビニのうまい棒を時々は食べて、財布におそらく母親が入れたであろう1、000円が大金でカロリーメイトが高級品?金銭感覚の違いに、俺は戸惑った。


しかし父親の夕食を見ても小金持ちぐらいの家庭には見えるし自宅は家賃の安い市営の住宅らしい。


異様なものを既に感じていた。


「只今ー。」


「、、、」


父親にはお帰りなさいも言わない。

不仲なのだろうか?


「おぉ!まだいたか!さぁて、野球中継までの時間の間、テレビ、テレビ、ナイターが始まるまでニュースでも観るか。なんだあいつはまた今日も帰ってないのか。どこでしゃべくってんだか。」


そう愚痴りながら自分で冷蔵庫から缶ビールを取り出して注ぐ。


「まぁ、せっかくだから。お母さんが帰るまではゆっくりしてってくれや。」


「はい。ありがとうございます。」


威厳のありそうな親父さんだが、酒が入っただけで明るくなり、野球もだが、電車や飛行機の写真を取りに行ったり、ハーレー・ダビッドソンにも試乗をしてみたい等、多趣味で意外にも喋れる。


趣味に話を合わせて話題の尽きた段階で聞いてみた。


「めぐみちゃんは学校でも授業中でもいつも眠そうにされてます。何かご病気なんですか?」


「いや、俺にも分からん。」


「そうですか。」


「一回、脳ドックったかな?頼もうと思ったが、当時の医者が失礼で治療を打ち切った。今は地元の個人の内科だ。お母さんが病院代がだの金の話で煩いから殆んど行かせれんがな。」


「具体的な治療は?」


「投薬だ。」


段々彼女の置かれてる境涯が見えてきた気がした。


「ただいまー!」


無駄に明るい母親の声。


「今日ねー。久々に友達に会って長話しになっちゃったのよー。」


「またか。俺の夕飯は?」


「冷蔵庫に入ってるわよ。」


「しょうがねぇなぁ。」


めぐみの事を思い出して慌てて彼女の自室のドアを開ける。


やっぱりというか眠ってた。


彼女は家族というか両親と食卓を囲む機会なんて殆んどないのかもしれない。ふとそんな考えが過った。


じゃあ原因はどこに?


メンタルという言葉に殆んど生まれつきの障害?可能性を疑った。


実は、本好きが興じて独学で医学書を読み漁った事がある。


「この子は、めぐみは、何とかしなきゃ。」


考えが纏まってきた。


ならばなおさらだ。


「これ以上は御迷惑になります。またお邪魔させて戴いても宜しいでしょうか?」


「おう。構わんよ。酒が呑める年齢だったらなぁ。」


「また、めぐみちゃんに遇いに来てね。」


ふと思い出した様に棚を漁る母親。


「あ、これめぐみちゃんの写真なの。この子が親戚で外国の有名大学の留学の経験もあるのよ。それで、この子が、、、」


「おい!お前、いい加減にしろ。いつも言ってるだろ。引き留めたら相手が迷惑をするだろ!少しは考えろ!!」


「あらー。やだー。ごめんなさいねー。」


とある病名が思い浮かんだ。


代理ミュンヒハウゼン症候群。


分からん奴はネットででも調べてくれ。


「担任の先生には僕から、そつなく問題のない事を伝えさせて戴きます。それから、お泊めいただいて御馳走にまでなって、ありがとうございました。では、本日はこれで失礼します。」


「今度はドームに野球観戦でも行くか。じゃあな。」


「気を付けてね。まためぐみちゃんに会いに来てね。」


会話は穏やかだが、僕の内心は腑に落ちない。


こう言うときは深呼吸。呼吸法で気持ちを落ち着ける。


やり場のない怒りは納まった。


そして、めぐみの事を思い出した。


淡々と喋る姿がまるでお人形さん。


華奢で痩せすぎにも見える。


扱い1つで心も体も壊しそうな丈夫にできてない気の毒さ。


全部が、気になる存在だ。


いま思えば「初恋」とも言える。


とは言いつつも、めぐみに知り合う前から好きな子は、何人かいた。


要は、特別なのだろう。


帰路に向かいながらずっとそういう内容の事を考えてた。


僕は、開放的な性格もあってか思った事が口に出るタイプなので特にTPOには気を付け様と思う。


帰宅してすぐにパソコンで病気の事を調べた。


さすがに調べきれずに疲れて布団に入ったが、すぐには寝付けなかった。


それから進級した。短髮にもしてないのになかば無理矢理ツレでもない奴ら

から運動部に誘われて入っていきなり野球部でレギュラー入りして忙しくなってしまった。ファンもついてしまった。


桜高の赤星やら、桜高のイチローやら、桜高の俊足のジョンくん。


なんてアダ名までついた。まー、悪い気はしないし、むしろ気分が良い。


だが、スポーツは学校外の個人のクラブでも通おう。


俺は、めぐみの為にネットの調べものをする方が大事だという考えだ。


めぐみとは時々電話で話す。


彼女は変わらない。


だが彼女の言う様に本当に美術一本で2年に進級は出来たらしい。


僕は、とある春休みの昼頃にめぐみに電話をした。


「、、、元気か?」


「、、、」


完全に無言。


「何かあったのか?」


「引っ越すことになった。」


「?!」


さすがの俺でも驚きを隠せない。


「どこへ?」


「市内。」


ほっと胸を撫で下ろした。


「びっくりしたよ。なんでまた?」


「お父さんが持ち家を買うんだって。マンション。学校とお父さんの職場が近くなって楽になるの。お母さんだけが反対してるけど。お父さんが俺一人でも住むって言ってる。」


「なら良かった。」


「あのね。」


「なに?言ってみ。」


「引っ越しって、初めてでちょっと楽しみ。」


彼女の、初めて、嬉しそうな声を聞けて俺まで嬉しくなった。


「じゃあ、近いうちに遊びに行きたいな。」


「ジョンくんなら歓迎するよ。」


もう決めた様なもんだ。


謂わねば損だとばかりにめぐみに伝えることにした。


「明日の進級式にこれないか?」


「行くのしんどい。」


予想通りの答え。


迎えに行く。後、ちゃんと送ってくから。渡したいものがあるんだ。」


「なに?」


「気に入るか分かんないけど、受け取るだけでも。」


「分かった。頑張って行く様にする。電話で早めに起こしてくれる?」


「おう!じゃあ今日は早く寝ろよ。」


「うん。眠いから。おやすみなさい。」


僕は数日前に買った小振りのケースに入った、とある彼女へのプレゼントを引き出した。


机に仕舞う。


そうしてめぐみを見習ってさっさと寝てしまった。

~~~~~~~~~~


(中編へ続く。)

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