クラクション

羊谷れいじ

夏の・・・

海岸線が左側に見える丘のカーブを曲がると、夏の終わりの日差しが眩しかった。

 親友に誘われて、ふらりと来たドライブ。助手席で俺はビールを飲んでいた。


 半月前、俺は彼女と別れた。理由なんてどこにでもある喧嘩だった。このところ、すっかり二人の仲はこじれていたから、別れ話が出るのも当然だった。さようなら・・・と言った彼女の涙ぐんだ目が今も俺をとらえていた。


 親友はそんな俺に何も言わず、ただ車を走らせた。俺は過ぎてゆく風景に目をやりながら3本目のビールを開けた。


「この道、彼女も連れて2年前に走ったっけな・・・」と不意に親友が言った。

「そうだったかな」愛想のない俺

「あのとき、実は彼女のこと好きだったんだ。でもお前ら、本当にお似合いだったからさ・・・」


親友は懐かしそうに前を向いたまま目を細めた。



「また、三人でこよう・・・」親友はそう言うと携帯を渡した。

俺は苦笑いをすると、彼女に電話をかけた。

 

 空にはまだ夏の雲がぽっかりと浮かんでいた。


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クラクション 羊谷れいじ @reiji_h

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