フューチャーワールド
羊谷れいじ
はじまり そして
彼女が真夜中の雨の道で車を飛ばず。
僕も彼女も黙って、雨粒が流れてゆくフロントガラスを見てる。
チラリと見た運転席の彼女が、不機嫌そうだったり困った風だったりして見えた。
カーステレオからは、あの曲がまるで、今の僕たちに「昨日の夜」を思い出させるように流れていた。
「考えすぎることないんじゃない?」と、どれくらいかわからない沈黙の後、彼女が乾いた声で言った。
「・・・・。」僕は次の言葉を待った。
相変わらず、雨粒はフロントガラスに音を立ててる。
「あなたが、重たく考えると私まで辛くなる。今の気持ちを大事にして先を見てゆこう」
「うん・・・。」
彼女と僕は、車を適当なコンビニに止めると、二人で降りてアイスを買った。
愛とか考えるには、あまりに浅はかな二人だった。一寸先さえもわからない。
それは、今夜、車で走り抜けてきた真夜中の雨の道のように・・・。
アイスを食べた僕たちは、どちらからともなく笑顔に戻っていた。
「ねぇ、これからどうする?戻る?もっと行ってみる?」
その彼女の言葉は、まるで僕たちの今後を暗示してるように聞こえた。
「もっと、先へ行ってみよう」
僕は笑顔で答えた。
「明日、仕事寝坊しても知らないんだからね」
と彼女は、笑うとハンドルを切って再び、真夜中の雨の奥へと走り出していった。
フューチャーワールド 羊谷れいじ @reiji_h
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