その心は君の為に
カーテン越しに雨だれの音がする。
「……今日は雨だったか?」
まだ窓は夜モード、枕元に浮かぶ時計の文字を見る。もうすぐ起床の時間だ。
突然、暗い部屋に子供の勇ましいコーラスが流れる。レトロアニメのロボットの名前を連呼する歌に、オレはベッドから飛び起きた。
「マスター! おはようございます! 今日は一日雨予定だよっ! 出撃時間まで、後一時間半、カウントダウンする?」
笑顔を映したジャスが、ベッドの上をふわふわと飛んでいる。
「お前、戻ったのか?」
時計と一緒に置いたバリカを手にとり、通信アプリを立ち上げる。そこにはメーカーと姉から、対策ソフトが完成して、感情プログラムを立ち上げても良くなったことが書かれていた。思わず笑い出す。
「十五分おきにカウントダウンしてくれ。朝食は?」
「出来てるよ! 味噌汁、ヒート砲で暖める?」
「いや、温いままで良い」
笑いながら着替えを始める。ジャスがオレの顔を伺うように周囲を飛び回る。
きっと、あの頃のようにオレの機嫌をチェックしているんだ……。
「全く、いつまで子供扱いするんだよ」
まとわりつくジャスの頭に軽くデコピンして、オレはキッチンに向かった。
テーブルには、味噌汁に今朝はベーコンエッグとコーンサラダ、昆布の佃煮に、ご飯が乗っている。箸を取って、オレはジャスに言った。
「今度の日曜日は八時に起こしてくれ」
「ラジャー! マスター、お出かけ?」
「いや、お前と姉貴が毎週見ているヒーロー物を一度見ようと思ってさ」
佃煮をご飯に乗せて頬張る。ジャスのカメラアイがキラキラと光った。
「ジャステリオン!? マスター、見たいの!?」
「ただ、どんなもんかなぁ……と」
チカチカと嬉しそうに表情がめまぐるしく変わる。
「ジャステリオンはね……」
顔の画面にカラフルなヒーローの映像を映しながら、ジャスは解説を始めた。
「ああ、解った、解った。ご飯おかわり」
佃煮で一杯食べてしまって、空になった茶碗を差し出す。
「一人で戦う孤独なヒーローが、また格好良くてね……」
しかし、映像をくるくる変えながら、ジャスの解説は止まらない。
「聞いてねぇな……」
オレと一緒に見られるのがよほど嬉しいのか、ベラベラと調子に乗って話しまくる。
……やっぱり、コイツはこうでなくてはな。
コイツは、オレの生きてきた積み重ねなんだから。
まあ、これで寂しくはなくなったが、また騒々しい生活が始まる。オレは、やれやれと肩を竦めて、自分でおかわりをよそった。
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