第113話 届かない言葉は

いつも孤独だったんだ

たくさんの人の中で

投げ掛けても投げ掛けてもこの言葉は届かない

ただ流れる人並みに吸い込まれていくだけで

飽きもせずそれを見ていた

思いが死に絶えていくのを見ていた


別に寂しい訳じゃない

独りなのはもう慣れた

ただぽっかり開いた穴が体を埋め尽くす

この瞬間がどうにもやりきれなくて

涙さえ流せない自分の

意気地のなさが嫌いだった


ねえどうすればいい?

思いを伝えるにはどうすればいい?

たとえこの体が朽ち果てても

この姿が認識されなくても

生きた言葉を生み出したのだと

それだけは自分自身に刻みたいのに

全てがこの指の間をすり抜けて

何もなかったように時は流れる

この体と思いを置き去りにしたまま

死にゆく言葉ばかり残して

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