第86話 蜘蛛の糸

頭の中に響き渡る低音は

いつしかじくじくした痛みに変わる

一歩ごと強まる痛みに舌打ちして

それでも歩みは止めることなく

鈍い頭痛をやり過ごしながら

この曇天からの抜け道を探す


ああこの世界に救いなんてあるはずないのに


もうこの手には道を切り開く力はなく

運命を変えられるほどの意志もなく

どこかの誰かが垂らしてくれる蜘蛛の糸

そんなありもしない幻想に縋るしかない

愚かなこの身は飢えた野良犬のように

醜くひたすら獲物を求めさまよう


ああその糸さえ切れれば終わるというのに


頭の鈍痛は次第に全身を蝕み始め

もう痛みがないと不安になるほど

麻薬的なその刺激に溺れている

この痛みに終わりなんて来なければいい

歪み始めた思考はゆらゆら揺らめき

ただ幻の蜘蛛の糸を待つ

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