第86話 蜘蛛の糸
頭の中に響き渡る低音は
いつしかじくじくした痛みに変わる
一歩ごと強まる痛みに舌打ちして
それでも歩みは止めることなく
鈍い頭痛をやり過ごしながら
この曇天からの抜け道を探す
ああこの世界に救いなんてあるはずないのに
もうこの手には道を切り開く力はなく
運命を変えられるほどの意志もなく
どこかの誰かが垂らしてくれる蜘蛛の糸
そんなありもしない幻想に縋るしかない
愚かなこの身は飢えた野良犬のように
醜くひたすら獲物を求めさまよう
ああその糸さえ切れれば終わるというのに
頭の鈍痛は次第に全身を蝕み始め
もう痛みがないと不安になるほど
麻薬的なその刺激に溺れている
この痛みに終わりなんて来なければいい
歪み始めた思考はゆらゆら揺らめき
ただ幻の蜘蛛の糸を待つ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます