第79話 解放少女
ガラスケースに飾られた少女は
誰もが見惚れるようなほほえみで
外の世界をただ見つめていた
温度のない渇いた瞳で
その瞳に映る世界は鮮やかで
痛みや喜びやあらゆるモノが
絡み合い解け合いながら
キラキラキラキラ輝いていた
誰もが眠る深い真夜中
少女は外へと手を伸ばす
ねえ外の世界はどんななの?
どんな匂いでどんな温度?
少女の欲望は止まらない
ねえ出して、ここから出して
もう感情も枯れかけて
喜びも哀しみも感じられない
この手足を縛られた状態で
何の温度も感じないまま
生きていたって仕方ないから
痛みも温もりもこの身に刻みたい
少女の願いを聞き入れるように
ガラスの扉は砕け散った
手足を縛っていたはずの鎖は
鈍い音をたて解き放たれた
粉々に飛び散ったガラスの上を
そっと少女は歩き出す
その白い足からは血が流れ
ジクジクとした痛みが少女を襲う
それでも少女は歩き続ける
ガラスケースから降りたって
ただ自分の信じた道を
傷だらけの足で踏みしめて
遠くの朝日は柔らかく差し
頬に受ける風は冷たくて
道端の花の香りを吸い込む
求めていたのは生きた感情
たとえそれが血塗れの道のりでも
望んだ道を行く少女の顔は
キラキラと輝いている
もうガラスケースには戻らない
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