第76話 取り残される時に

もうどうしたって時間は進んでいくし

流れの中必死に追いつこうとしても

無情にも伸ばした手はすり抜けていく


通り過ぎていく景色は残像みたいに

瞼に焼き付いて決して消えはしない

もう二度と手にすることはないのに


記憶だけ残す時間はあまりにも残酷だ

そうやって置き去られた魂だけが

時の流れに重苦しい澱みを作るのに


その澱みに深く足を取られたまま

新鮮な空気を求めてただもがいて

それでも為す術なく無様に沈んでいく


もういっそこのまま暗い底に身を任せ

進んでいく時間をただ傍観しながら

全てが終わるのを待とうか

痛みも何も感じなくなる時を待とうか

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