第63話 湖に沈む
底の見えない湖に
足を踏み入れているよう
音もなく沈みながら
ぶれる月を見つめて
少しずつ奪われていく
呼吸をかすかに感じ
ただ広がる透明に
なすすべも無く堕ちていく
やがて痛みも苦しみも
この体から遠ざかり
残るのは少しの後悔と
未知の領域への恐怖心
それすらも甘く誘うから
五感は抗うことをやめ
もう戻れないことを知り
そっと意識を手放した
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