第26話 意味

痛いんだ、ってつぶやいてみる。


笑ってても何してても、

本当はずっとずっと痛くて、

それなのに、全然泣けなくて、

強くもなんともない心が、

少しずつ軋むのを感じて。


それでもやっぱり笑うしかなくて、

自分自身でさえ本当の、

自分の姿が見えなくなって、

左手で、Tシャツの胸の辺りを

きゅっと掴んでみる。


ぱくぱくと動く心臓は、

果たしてホンモノなんだろうか?


それすらもう信じられないなんて、

ここに存在の意味なんてある?

立っているはずの足下が、

ひんやり寒くてイヤになる。


ここに自分が居ることを、

何をもって証明すればいい?

ここに自分が在ることを、

どうすれば自分で信じられる?

もう、何もかも分からないよ。


それなのに、やっぱり空は青くて。

こんなに痛いのに、風は凪いでいて。

その事実だけで、ここにいてもいいと言うのなら。


世界は、ああ、こんなにやさしい。

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