第2話 あじさい模様

深い緑の森の奥

静かな雨に濡れる葉に

あじさいはぽろぽろと

輝く宝石をこぼした


触れたくて手を伸ばす

けれど何もつかめなくて


青から紫へと流れる

花びらのグラデーション

静かに凪いだ海が

風にたゆたうかのように

そっと傷口に手を触れて

その痛みを癒して


気だるく覆う哀しみは

遠い彼方へと押しやられ

やがて無数の霧となって消えた


目を閉じて映る花の群れは

しっとりと揺れながら

透明の風に抱かれた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る