祖父母の暴走
2月12日火曜日、長男は朝まで殆ど眠れなかったようです。前日のことも響いたのでしょう。6時頃一人で起きてきましたが、頭痛が酷く、薬を飲みに来ました。寝不足で立ち続けることが難しく、すぐにリビングのソファに横になりました。
次女も相変わらず起きられませんでした。
それぞれの学校に定時連絡を入れ、次男を連れて幼稚園へ向かおうと、家を出たところで、私ははたと立ち止まりました。
両親でした。
「何、今出るところか?」
「これから幼稚園行って仕事だけど」
「二人は俺たちが学校に連れて行くから、おまえは仕事行け!」
実際、時間は差し迫っていて、構っている場合ではありません。
大丈夫かなという不安はありましたが、どうしようもなく、私は「わかった、ありがとう」と声をかけてそのまま家を出ました。
これがいけませんでした。
その後LINEで次女より、
≪朝からじじたちに説教くらってるんだけど≫
しまった、と思いました。
また余計なことを喋っているに違いない。けど、今戻ったら私は遅刻してしまいます。
結局どうにも出来ず、遠くから事態を見守るほかありませんでした。
帰宅後、いろいろと聞きました。
祖父母は、具合が悪くまだ横になっていた長男を叩き起こして着替えさせ、無理矢理ご飯を食わせるとそのまま車に乗っけて小学校まで引っ張っていったそうです。職員室で校長先生や教頭先生とも話したらしく、学校に行っていないこと、体調悪いことなども聞き、更に憤慨してしまったようでした。
「長男君のこと、連れてきてくださってありがとうございます」
と先生方に言われたことで、父は自分の行動には一切の誤りがないと確信したようです。
次女も、その後戻ってきた父に連れられ学校へと8時40分過ぎに到着。やはり職員室まで行き、いろいろと喋っていたらしいと聞きました。
慌てて実家に電話しましたが、母は特に自分たちの行動が今後次女や長男に及ぼす影響などと言う難しいことまで考えはしていないらしく、
『私たちが連れて行かなかったら、二人とも今日休んでたんでしょう! しばらくは朝起こしに行くからね!』
と、見当違いのことを言い始めました。
「連れて行ってくれたのはありがたいけど、本人たちが傷つくような言葉は言わないで欲しい。ストレスがかかるともっと悪くなるから。言葉を選んで、慎重に、前向きな言葉だけをかけ続けないと、すぐに悪化する病気なんだよ」
精神的な側面から支えることで回復を早めるという方針を、両親は一瞬でズタボロにしてしまいました。
「私は明日休み取ってるから、明日は来なくていいから」
そう言うのが精一杯です。
次女も長男も、豹変した祖父母に驚きを隠せず、怖い怖いとそればかりでした。
「立てないのに、無理矢理引っ張られた。頭がガンガンして、吐きそうだった」
長男は特にショックで、顔を青くしていました。
「じじばば、いつも優しいのに、どうしてああなったんだろう」
理由なんて、わかっています。
「私が辞めるって言ったから、大変なことになったと思ってやったんだろうね。悪気はないんだろうけど、やり方は悪かったね。とにかくどうにかしなくちゃね……」
そんなことがあったからか、翌日も長男は起きられず。次女も遅くに起きたようです。
幼稚園の行事を終え、長男の診察のため総合病院へ。県立病院への紹介状を貰いました。
診察の時間には、頭痛は止んでいたようですが、時々頭痛があること、夜寝られなくなってしまったこと、祖父母に話したら更にややこしくなったことなどを伝えると、先生はまた、
「早く心療内科に診てもらわないとね。小児科の範疇を超えてる」
と苦笑いしていました。県立病院へ繋がるのは、早くても夏頃だろうということでした。
夕方次女を学校に連れて行き、先生方に父の無礼を詫びました。
「教育熱心なお祖父様で。ありがたかったですが、そういうことだったんですか」
次女も怖かったと正直に先生方に訴えていました。
有効的な打開策を一日で取れるはずもなく、それどころか実家から、
『明日から9時頃に家に行くから』
と一方的な電話がありました。
参ったなとは思いましたが、私も仕事。
次女と長男には、
「じじばばが来る前に学校に行ってしまえば、被害は免れる」
としか言えませんでした。
身内が親切心で行っていることを否定するのは、とても大変なことです。
他人ではないので、怒鳴りつけて縁を切ることも出来ませんし、追い返すことも出来ません。
参りました。
本当に参りました。
そしてまた翌日、大変なことが起きるのです。
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