試練

ひいおばあちゃんの死

 2018年1月23日火曜日、外は大荒れでした。雷が轟き、辺りは一面真っ白。典型的な猛吹雪です。

 いつもと同じように子どもたちを送り出し、いつもと同じように仕事をしますが、あまりにも天気が悪く、お客さんの数も疎らでした。

 子どもたちは幸い、そんな中でも具合を悪くすることもなく、次女以外は元気に登校・登園していていました。電車は止まりそうな天気だし、早く仕事を切り上げて早く帰らなくてはと思いながら午前中の仕事を終えました。

 昼休み、スマホにショートメールが届いていました。父からでした。


10:55

≪ばあちゃんもう終わりです。今病院です。あと少しで終わりです。また連絡します≫

12:48

≪あとはみとりで入院しました≫


 ……終わりって何だ。

 病院……? 倒れたのか……? みとり……?

 慌てて電話しましたが、なかなか繋がりません。

 病院だろうし、電源切っているのかも。


13:57

≪どこの病院?≫


 返事がありません。

 家族LINEにスクショを送って、事情を説明しました。

≪ひいばば、そろそろお別れだって≫

≪まじか、、≫

 最初に反応したのは次女でした。

≪病院聞いてるけど、じじから返事ない

 そろそろかと思ってたけど、早い……。≫

 次女の迎えは、この日15時。ついでに伝えましたが、具合が悪く行けそうもないとのこと。学校に電話するよう伝えます。

 やりとりしているうちに、父からメッセージが帰ってきました。病院名、病室番号が書いてありました。

 夫からもLINEが入りました。近くで仕事をしているから、終わったら合流するとのこと。

 仕事を終えたら子どもたちを拾う前に病院に行くか、拾ってから病院に行くか。とにかく、大変なことになったと胸が騒ぎました。


「なんか、うちの実家のばあちゃん、今日が峠らしいです」

 部長や課長に言い、この日は定時で帰ることに。

 参ったなとロッカーを開け、スマホを確認すると、またショートメール。


16:47

≪終わりました。≫


 ……終わりました。

 つまり、死んだってこと……?

 昼の連絡から数時間、本当に、あっという間でした。

≪死んだっぽい≫

 家族LINEに書き込み、どうしようもないので、子どもたちを迎えに行くことに。

 夫が長女を拾い、私が他の三人を拾って一旦帰宅、そのあと実家へと向かうことになりました。

 18時過ぎに父から連絡があり、遺体は既に実家に運んだこと、和尚様が来てお経を上げてから葬儀の日程を決めることなどを聞きました。和尚様が来る前ぐらいに行けばどうにかなりそうとのこと、少しだけ余裕があります。

 何が起きているのか、にわかには信じられない子どもたちを連れて、実家へと向かいました。


 祖母は白い綺麗な布団に寝かされていました。顔にかけられた白い布を取ると、未だ眠っているだけのように見えました。

 上の子たちが未だ小さかったとき、まだ病児保育のなかった時代、熱を出すといつも面倒を看て貰いました。遅番のときには夜ご飯まで作って貰って、めんこめんこしてくれたものです。

 認知症が進みすぎて、ここ数年は会話すらままならなかったのですが、頭はアレでも身体は丈夫だと父が愚痴るほどだったのに。やはり、寝たきりになってからは早かったように思います。

 未だギリギリ会話が出来ていた頃、長女や次女のことを私の名前で呼んでいたそうです。認知症の人の言ったことに対していちいち否定してはいけないことを、次女は認知症サポーターの講座で知っていたそうで、何度同じことを言われても、何度も同じように返していたようです。

 子どもたちが大好きだったひいおばちゃんの死は、こうして突然訪れました。

 悲しくて悲しくて、沢山泣きました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る