第4話 大学生活
「タロー、おーい、モモタロー」
モモタロと呼ぶ彼は剣真という同じ学部の男で、話すようになったのはここ最近だ。
大学の2年目の春、校外学習で彼を初めて見た。
まだ少し肌寒い季節だったが黒いTシャツ一枚にごつごつした質感のジーパンに、腕組みをしながら楽しそうに話をしている姿だった。
筋肉質だが青年らしい独特の体のラインを黒いシャツ一枚が強調させ、春の陽気を体中に浴び校外の緑の背景に合っていた。
割と”お上品”な大学には珍しかったのかもしれない。
あんなかっこいい人、うちの大学にいたかな。
彼も喫煙者だったようで、学内の喫煙所で顔を合わせるうちに自然と話すようになり、モモタロウと言う名で呼んだ。
彼の家は板金工場を営んでいたが、大学1年が始まってすぐに火災で工場が焼失した。1年休学することになり、珍しくおない年ということもあったからか、お互いのことを色々と話した。
彼はこちらの事情を聞くと、「やっぱりモモタロウはモモタロウだ」と笑顔を見せ、その笑顔は心の中にすんなりと落ち着いた。
そして、彼の家の仕事と、彼の剣真という名前から、両親の強い思いを感じた。
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