魔王剣、斬られ役(影)に問う


 202-①


「クレナ、キクチナ!! 私の……私のロイ将軍をお救いするんだ!!」

「よーし、任せてミーナ!!」

「え、援護します!!」



「白銀の死神が戦列に復帰したら一気に形勢不利になります、レムのすけさん、敵を近付けないで下さい!!」

「グゴアァァァッ!! マカ……セロ……キサイ!!」



 仲間達の激闘が続く中、武光を衝撃波で弾き飛ばして間合いを取った影光はネキリ・ナ・デギリを正眼に構え直した。


「お前、その剣は一体……?」


 武光からの問いかけに、影光は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「フッ……この剣こそいにしえの魔王の愛刀、魔王剣ネキリ・ナ・デギリ……俺の相棒候補見習い(仮)!! 現在絶賛『俺の相棒オーディション』中だ!!」

〔何だと……!?〕


 影光の言葉を聞いてネキリ・ナ・デギリは不快感を露わにしたが、影光は「当然だろ?」と言わんばかりの涼しい顔だ。


「タッグってのは互いに選び、選ばれてこそ成立する!! 審判のまじないを経てお前は俺をあるじと認めた。だから後は……俺がお前を相棒として認めるかどうかだけだ!!」

〔貴様……我を試そうというのか、絶大な力を持つ至高のつるぎたるこの魔王剣ネキリ・ナ・デギリを……!!〕

「……『強いから』とか『偉いから』って理由でつるむのは、相棒とは言わん!! 言っておくが……手強いぜ、俺の本体と相棒イットーのタッグは」

〔フン……あんな虫ケラ、我の力ですぐに滅してくれるわ!!〕

「うおっ!?」

〔魔煌……飛刃波ッッッ!!〕


 影光はネキリ・ナ・デギリに引っ張られて、ネキリ・ナ・デギリを水平に振り抜いた。剣の軌道に沿って放たれた紅く煌く光刃が、武光目掛けて飛んでゆく。


「はぁぁぁぁぁっ!!」

〔はぁぁぁぁぁっ!!〕


“すん!!”


〔なっ!?〕


 サンガイハオウですら易々と斬り裂いた光刃を、武光とイットー・リョーダンは真っ向から両断した。二つに分かれた光刃が武光の背後の石壁に深々と切り込みを入れる。


〔馬鹿な……魔煌飛刃波を斬り裂いただと……!!〕

「な? 言ったろ、俺の本体と相棒は手強いって?」


 何故か自慢気な影光にネキリ・ナ・デギリは苛ついた。


「くるぞ!!」

〔むっ!!〕


 影光は再び剣を交えた。斬り込み、防ぎ、斬り返し、躱され、躱し……ネキリ・ナ・デギリとイットー・リョーダンが何度もぶつかり激しく火花を散らす!!


「うおおおおおっ!!」

「ぬおおおおおっ!!」


 互いに袈裟斬りを繰り出した武光と影光は、そのまま鍔迫り合いへと移行した。


「くっ!!」

「チッ!!」


 力は全くの互角、しばしの膠着状態の後、体力の消耗を嫌った両者は後方に跳び退いて間合いを取った。


〔おい……貴様!!〕

「ん?」


 剣を構え直し、慎重に間合いを測る影光にネキリ・ナ・デギリが問いかける。


〔何が不満だというのだ……我は強い!!〕

「ああ、ここに来るまでに試し斬りは充分やったしな?」

〔尋常ではない斬れ味を誇る彼奴あやつの剣を受けても傷一つつかぬ!!〕

「ああ、とんでもなく硬いな」

〔ならば、何が気に食わぬというのだ!!〕

「…………そうか、分からないか」


“ガッ!!”


 影光はネキリ・ナ・デギリを床に勢いよく突き立てた。


〔なっ!? 貴様!? 何をする!!〕


 腰から影醒刃シャドーセーバーつかを取り出しながら影光は告げた。



「魔王剣ネキリ・ナ・デギリ、お前は……オーディション不合格だ!!」


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