斬られ役(影)、戦慄する


 199-①


 影光自身は実際にロイ=デストと遭遇するのは初めてであったが、武光の記憶を持っている影光は戦慄していた。

 武光がロイと戦った時に味わった痛み、苦しみ、そして死の恐怖の鮮烈な記憶が、全身を駆け巡る。


「影光、コイツがどうかしたのか?」

「わーっ!? おいバカやめろ!!」


 倒れているロイに手を伸ばそうとしたガロウを影光は慌てて制止した。


「何だ影光、何故止める!?」

「バカヤローーーーー!! お前、俺の国だとこういうの『触らぬ神に祟り無し』って言うんだからな!?」


 ビビり倒す影光に対し、ガロウは怪訝けげんな顔をした。


「神だとぉ……? この人間がかぁ!?」


 その時、倒れているロイを興味深そうに見ていたキサイが何かに気付いて声を上げた。


「……この銀色の髑髏どくろの仮面と銀の鎧は……影光さん、まさかこの人間は……は、白銀の死神……ロイ=デスト」

「こ……コイツが、あの白銀の死神なの……!?」

「い、いや……」


 ヨミに詰め寄られた影光はしどろもどろになった。


「……ふーん、やっぱりそうなのね?」


 読心能力を持つヨミに隠し事は不可能に近い。影光の心を読んだヨミは、短刀を取り出した。


「ヨミ!? お前何する気だ!?」

「決まってるわ、息の根を止めるのよ!! コイツが虫の息の内に!!」

「ば……バカヤローーー!! コイツを甘く見るなーーーっ、例え虫の息でもコイツは危険──」


 ……それに気付いた影光は戦慄した。


「オイ……ちょっと待てよ……虫の息だと……!?」


 ……ロイ=デストを……あのバケモノじみた強さを誇る死神を……虫の息にした奴がこの城にはいる。一体誰が──

 その思考は近付いてくる騒々しい足音にかき消された。


 影光から見て正面の扉が勢いよく開き、数人の男女が突入してきた。その先頭に立っていた男と目が合った瞬間、影光は身構えた。


「ゲッ……お前も来てたのかよ……本体」

「お前は……分身!!」


 超武刃団 が現れた!!

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