斬られ役、スキルを発動する
175-①
「「「サンガイハオウ……見参ッッッ!!」」」
武光達の前に降り立ったサンガイハオウは肉体の感触を確かめるように、左右の拳を交互に一度ずつ前に突き出した後、額の前で前腕を交差させ、両肘を引いて構えた。
降り立ったサンガイハオウを前に、武光とフリードはわなわなと肩を震わせていた。
「ちょっと武光、しっかりなさい!!」
「フー君!? 大丈夫!?」
肩の震えが収まらない二人を心配したミトとクレナは、二人に声をかけたが……
「「カッコイイ……!!」」
「……はぁ!?」
「アニキやべぇよ……めっちゃカッコイイよ……」
「おう……今のめちゃめちゃカッコ良かったよな!?」
「あ……アホかーーーっ!?」
「あべしっ!?」
「ひでぶっ!?」
ミトは、武光とフリードにビンタを喰らわした。
「アレは敵なのよ!?」
「だってミト……合体やぞ!! 合体!!」
「この……バカーーーっ!!」
「ぐえっ!?」
ミトの怒りの頭突きが武光の胸板に炸裂した。
「全く……何を子供のように目を輝かせているのですか!!」
「姫様の言う通りですよ、武光様!!」
「そうだよ、フー君も!!」
「二人共、リョエン様を見ろ!!」
「そ、そうです。リョエン先生の落ち着きぶりを見習って下さい!!」
女子一同に指を差されたリョエンは慌てて咳払いをした。い、言えない……『興奮のあまり固まってしまっていただけ』などとは断じて言えない!!
「「「さぁ、覚悟しろ!!」」」
右の拳を振り上げて、サンガイハオウが突進してきた。武光達はサンガイハオウの突進を散って回避した。壁に炸裂したパンチが壁に大穴を開け、大広間を揺らす。
「くっ……火術、炎龍!!」
リョエンの放った凄まじい炎の奔流がサンガイハオウを包み込むが、サンガイハオウは炎をものともせず悠然と振り返ると、背中の翼を羽ばたかせた。
「ぐはっ!?」
巻き起こした突風は、まるでロウソクの火でも吹き消すかのように、炎龍を軽々と消し飛ばしただけでなく、リョエンをも吹き飛ばし、リョエンを背中から広間の石壁に叩きつけた。
「あれほどの巨体……懐に潜り込めば!!」
今度はミトがサンガイハオウに向かって突進した。3mはあろうかというサンガイハオウの足下に素早く飛び込んだミトだったが、先端が槍のように鋭く尖った蛇のように長い尻尾がミトに襲いかかる。
「くっ!!」
猛攻を捌き切れず、ミトは一旦、尻尾の間合いの外に出た。
この国屈指の天才術士の術を軽々と打ち消し、剣の天才と謳われる救国の英雄姫を寄せ付けないサンガイハオウを見て、シルエッタが満足げに微笑む。
「フフフ……それでこそ私が技術の粋を集めて作った影魔獣です」
「くっ……ナジミは先生を
武光の指示を受けて、仲間達が一斉に動く。武光はシルエッタ目掛けて階段を駆け上がった。
「うおおおおおっ!!」
勢いよく階段を駆け上がった武光は『神妙にお縄を頂戴しろぃ!!』と踊り場にいるシルエッタに飛びかかったが、見えない壁に弾き返されて階段を転げ落ち、勢いよく床に叩きつけられてしまった。
「無様ね……触れてはならないものに触れようとして地に落ちる……貴方のような愚者には相応しい死に方……あら?」
シルエッタは驚いた。階段から転落した武光が……平然と立ち上がって来たのである。
「……流石に石の床はちょっと痛かったな」
「そんな……あの勢いで落下したというのに怪我一つ無いなんて」
いつもの微笑みが消え、驚愕の表情を浮かべているシルエッタを見て、武光は悪役らしい笑みを浮かべた。
「フフン……俺は斬られ役歴が長いんや、こちとら『階段落ち』の訓練も経験も山ほど積んできとんねん!!」
障壁に弾き飛ばされた瞬間、武光は瞬時に体を丸め、頭をしっかりとガードしながら階段を転げ落ちていたのだ。ラノベでよくある『取って付けたようなもらい物』ではない……長年の鍛錬で会得した、真の意味での
ちなみに負傷はしなくても『階段落ち』は結構……いや、相当痛い。専門家の指導の下で充分に訓練を積んだ上でやらないと大怪我は免れないので、素人は絶対に真似してはいけない。
「さて……と、ようもやってくれたなあ?」
武光の視線に、シルエッタは心の奥底がほんの少しだけゾクリと騒ついたのを感じた。
「今回は……ヒップアタックだけでは済まさん!! ヒップアタックと……侍パワーボムの刑じゃーーー!!」
「「「そうはさせませんよ?」」」
「うおっ!?」
「「「死んじゃえゴミ虫♪」」」
再び階段を駆け上がろうとした武光の前に、サンガイハオウが立ち塞がった。
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