巫女、思い出を語る
91-①
「ゲンヨウ、天驚魔刃団の皆さんに滞在用の部屋を用意して差し上げなさい」
マナは、ゲンヨウに命じた。
「…………かしこまりました、お嬢様」
「先程も言いましたが、この方達は私達の命の恩人の婚約者御一行です。客人として扱い、くれぐれも失礼の無いように」
不服そうなゲンヨウに、マナは念を押し、ゲンヨウは黙って一礼した。
「……御案内致します、どうぞこちらへ」
ゲンヨウに先導されて、天驚魔刃団の面々は姫の間を出た。そして、天驚魔刃団がおかしな真似をしないか監視するべく、リュウカクとフォルトゥナも影光達に続いて部屋を退室し、姫の間にはマナとオサナの二人が残された。
『ところで……』と前置きして、マナ姫はオサナに聞いた。
「いつもと話し方が違いますね?」
「あはは……この喋り方は、さっきの銀髪の人の故郷の方言なんです。さっきの彼、
「では、普段の私達の前での話し方は……?」
指摘されたオサナは照れ臭そうに頰をポリポリと掻いた。
「いやー、あっちの方が何か『巫女さんっぽいかなー』って思て……えへへ」
「ふふふ……そんな事気にしなくても、オサナさんは巫女として立派に勤められておられます。それに、そっちの話し方の方が親しみ易くて私は好きです」
「ホンマに? マナちゃんがそう言ってくれるんやったら……」
「……で?」
「へっ? でって……何が?」
「
「え……えぇ……」
「どうしました、オサナさん?」
「い、いや……マナちゃんいつも落ち着いてるから、そういう事に興味あったんやなって」
指摘されたマナは照れ臭そうに頰をポリポリと搔いた。
「オサナさんと同じですよ、あちらの方が『魔王の娘らしいかな』と思って……」
そう言ってマナは、ふふふ……と笑った。
「それに、魔王の娘と言えど私も女子です、ハッキリ言って恋愛については……興味津々です!!」
「えー、しょうがないなぁ……うふふ、じゃあ──」
「待てーい!!」
影光が 現れた!!
「オサナ……お前俺の事を婚約者だのコンニャク芋だの、ある事無い事ベラベラと喋る気じゃ──」
「5歳の頃……ウチはあっちの世界のオオサカという地域のイズミシという所でお父ちゃんと一緒に暮らしとったんです」
しかし 影光は スルーされてしまった。
「あっちの世界で初めて出来た友達が……まさちゃんやったんです」
「無視かよ!?」
「あっちの世界でウチ、近所の子供達からイジメられてたんです……で、ウチがイジメられてるのを知ったまさちゃんが『おれが、あいつらをやっつけたる!!』って……」
それを聞いて、マナは目を輝かせた。
「わぁ、カッコイイ!!」
「そう言えば、そんな事もあったな……確かその後、俺がカッコ良くいじめっ子達をボコボコに叩きのめして──」
「まさちゃんは……ボッコボコにされて、泣きながら戻ってきました」
影光は ズッコケた。
「う……思い出した。あの時お前、俺の顔見て『めっちゃ鼻血ブーやん!!』ってゲラゲラ笑ってたな……」
「ご、ごめんな……だってめっちゃ…………ぶふっ」
「思い出し笑いしてんじゃねぇぇぇー!!」
「でも、まさちゃんも『オサナを笑わせるためにワザと負けてきたんや!!』って言うてたし……あの時のまさちゃん、めちゃくちゃカッコ悪かったけど……めちゃくちゃカッコ良かったなあ」
目を閉じ、しみじみと幼い頃の思い出を語るオサナだったが、ふと目を開けるとそこに影光の姿は無かった。
「あ……アレ!? まさちゃん!?」
「影光さんなら、『俺はお前の婚約者なんかじゃねーかんな、ばーかばーか!! う◯こ!!』って顔を赤くしながら飛び出して行きましたけど……」
「ええーっ!?」
影光は 逃げ出した!!
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