少女(赤)、制止する
30-①
「くっ……マイク・ターミスタまであと少しなのに!!」
武光から渡された魔穿鉄剣を構えながら、フリードは歯噛みした。
武光達、天照武刃団一行はマイク・ターミスタを目前にして影魔獣の群れに襲撃されていた。
「円陣や!! 訓練を思い出して互いの背中を守れ!! 影魔獣は……俺が仕留める!!」
武光の指示で、フリードとクレナ、ミナハの三人は、キクチナとナジミを囲むように陣形を組んだ。
今の所は、互いにカバーし合いないがら、何とか敵の攻撃を耐え凌いでいるものの、敵の数は多い。
このまま持久戦が続けば、誰かの体力が限界に達した時に陣形は崩され、やられてしまう。
現状、影魔獣を倒す事が可能なのは、武光とその愛刀、超聖剣イットー・リョーダンだけである。
武光が全ての影魔獣を倒しきるのが先か、影魔獣が円陣を打ち崩すのが先か……時間との戦いである。
「ハァ……ハァ……もう……ダメ……」
体力の限界か、クレナはとうとう膝を地に着いてしまった。すかさず、右肘から先が剣状になっている人型影魔獣がクレナに襲い掛かった!!
「危ないっっっ!!」
“ガキンッッッ!!”
「ぐぬぬぬぬぬ……!!」
間一髪、クレナの前に飛び出したフリードが武光から預かった魔穿鉄剣で影魔獣の攻撃を受け止めた。
「こんの……野郎ぉぉぉぉぉ!!」
フリードは足で突き飛ばすように、影魔獣の胴体に蹴りを叩き込んで影魔獣を大きく後退させ、同時にロングコートの内ポケットから操影刀を取り出した。
それを見たクレナが慌ててフリードを制止する。
「フー君!? それは使っちゃダメだって隊長達が……!!」
「それでも……やるしかない!! あとその呼び方やめろ!!」
フリードは操影刀を自分の影に投げつけた。
操影刀はフリードの影に突き立った……が、何も起こらない。
「な、何も起きない!? そんな……うっ……ぐあああああああああっ!?」
「フー君!?」
フリードは突如として苦悶の叫びを上げると、魔穿鉄剣を取り落とし、ガクリと両膝を着いてしまった。
ガックリと
「危な──」
クレナは思わず叫んだが、間に合わない。
“がっ!!”
フリードは、両膝を着いたまま、振り下ろされた漆黒の刃を受け止めた。刀身を握り締める右手は……真っ黒に染まっている。
“グオァァァァァァァァァ!!”
フリードが……いや、正確にはフリードの右手が雄叫びを上げた。刀身を握り締めていた右手が、フリードの右手に入り込んだ恐竜型影魔獣……《黒王》の頭部へと形を変えて、影魔獣の腕を噛み千切る。
“グルルル……”
右腕に引っ張り上げられるように、フリードがゆらりと立ち上がった。制止する間もなく、フリードが影魔獣の群れに向かって歩き始めた。
「フー君!? ダメだって……きゃっ!?」
クレナはフリードを制止しようとしたが、フリードはクレナを殴り倒して影魔獣の群れに向かって突撃した。
ナジミが慌てて殴り飛ばされたクレナに駆け寄る。
「クレナちゃん、大丈夫!?」
「副隊長、私は大丈夫です!! それよりも……フー君を止めなきゃ!!」
「分かったわ、皆でフリード君を守るのよ!!」
「承知!!」
「わ、分かりました!!」
ナジミに言われて、クレナ達はフリードの後を追った。
「くそっ!! 待っとけ、俺もすぐに……っとぉ!?」
武光もフリードの援護に向かおうとしたが、三体の人型影魔獣が壁となって、武光の行く手を阻む。
「邪魔や……どけコラァァァァァ!!」
イットー・リョーダンを横薙ぎに振るい、影魔獣を真っ二つに両断するが、核には当たらなかったらしい、上半身だけになった影魔獣が武光の足にしがみつく。
武光の視線の先では、フリード達が影魔獣の群れに包囲されている。
「くそっ……フリード!! 皆!!」
武光が影魔獣を振り払い、フリード達を包囲する影魔獣の群れに突撃しようとしたその時だった。
「危険だ!! そこから動かないで!!」
どこからともなく男の声がしたかと思うと、無数の金属針が飛来し、フリード達を取り囲む影魔獣達に突き立った。
武光は、影魔獣達に突き刺さった長さ30cm、直径2cmはあろうかという金属針を見てハッとした。
「これは……まさかっ!! 皆、その場から動くなっ!!」
「《
雷鳴が響き渡り、幾条もの稲妻が影魔獣に襲い掛かった。雷に打たれた影魔獣達は動きを止めた。
「今の内です、影魔獣はまたすぐに動き出します!! 一緒に来て下さい!!」
「せ、先生ーーーーーっ!?」
リョエンが あらわれた!
30-①
そして、リョエンが武光達に『一緒に来い!!』と言っているのと同時刻、《
「俺の名は影光、一緒に来い……天下を奪りに行くぞ!!」
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