第10話 女子高校生 目覚め始める




 盗賊どもの破壊活動によってボロボロになった村を、痴漢男は右へ左へ曲がって追手から必死に逃れようとしていた。


 痴漢男の身のこなしは一般人の動きではなかったが、私を担ぎながら走っている上に追手は盗賊どものリーダー格――兄貴と呼ばれる人物で、逃げ始めの時と比べると距離が徐々に縮まっていた。




 私はたまらず叫ぶ。




「もういいから私を降ろしてっ! 盗賊の狙いは私なんだから、アンタが私を見捨てたら逃げ切れる筈ッ! このままじゃ、アンタも捕まるわっ!」



「断る」



「なんでよッ! 勝機なんてないじゃないのッ! そもそも、私を助けて何になるのよ!? アンタには何のメリットがないじゃないの!」



「そんなことはない――俺には、お前が必要だ」



「なんでよっ!」




 痴漢男は半壊している小屋を思いっきり蹴飛ばす。すると小屋はあっけなく倒れ、盗賊の進路を塞ぐ壁となった。



 痴漢男が、走りながら言う。こんな状況だと言うのに――彼は笑っていた。恐ろしいことに、私の尻を堪能するのも忘れていないようだ。




「お前がいないと――痴漢が出来ない。そんな退屈な異世界、股間が乾いてしまう」



「――――――――――ッ!! ば、馬鹿ッ! 痴漢ッ!? そんなの、命よりも大切な訳ないじゃないのッ!」



「痴漢は命より大切だ。そんなの当然だろ?」



「……い、意味が分からない…………!」



「だろうな」




 そう言うと痴漢男は鼻を鳴らし、近くの家へと飛び込んだ。土足で二階に上がり、寝室のベットに私を優しく投げた。



「な、なに……?」



 寝室のドアに鍵をかけた痴漢男は、息を整えながらこちらへやって来る。



「――今からお前を痴漢する」



「は、はぁッ!?」



 予想外の言葉に、思わず私は素っ頓狂な声を上げた。



「何言ってるのよ!? こんな場所、数分もすれば見つかっちゃうって! アンタだけでも早く逃げなさい!」



「数分?」



 私の言葉に、痴漢男は不敵に笑った。



「――ふん。数分もあれば十分だ。俺を誰だと思ってやがる?」



「………………えぇ」



 え? そこなの? え、何? まだ痴漢するの諦めてなかったの?




「お前こそいいのか? 気持ちよすぎてクセになっても知らないぞ?」



「なるかああああああッ!! ――って、えッ!? ほ、ほんとにするのッ?」



「当然だ」



「あぅ……。え、えと。……や、優しくしてね?」



 あああああああああああああああああああああああああああああああ! 何言ってるんだ私!



 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!



 もう死ぬッ! 恥ずかして死ぬッ!



 と言うか、もういっそ殺してくれようッ! ハイ恥ずかしくて死にまーす!



 全身が恥ずかしさで熱くなっている。間違いなく今の私の顔は真っ赤になっているだろう。――は!? 私が襲って良いって言ったらこれは痴漢じゃないような――ってそんなことはどうでも良いって!



 混乱する私をよそに、痴漢男はベットに乗り私の目の前で四つん這いになる。後十センチも近づけば唇が触れてしまいそうだ。



「いくぞ――『神隠し』――――」



「……へ? ――――って、えええええッ!?」



 少し遅れて――私のブラジャーとパンツが一瞬にして消失している事に気づく。う、嘘ッ!? 脱がされた感覚が全く無かった……!



 というか私の下着どこ隠したッ!



「……ふむ。中々の巨乳」



「…………ううぅうぅぅうぅうぅう」



 そして痴漢男はおもむろに私の胸を触り始めた。意外にも優しく触れたり離したり……。



 なんだか……凄くエッチだ。



 痴漢男の指の動きが嫌というほどよく分かる。




「…………ん」



 恥ずかしくて死にそうだ。全身隈なく熱いけど、特に痴漢男に触れられている胸が火傷しそうな程熱を持っている。



 汗が髪を伝って頬に垂れる。胸の間も汗でじんわりとしてきた。今現在パンツを履いていないかと思うと――……うぅ。



「……ふむ。やはり痴漢は良い。その恥じた顔が興奮する」



「う、うるひゃいッ!!」



 もう痴漢男の顔が見れない。私は目を瞑って体を強張らせる。



「……どれ。少し緊張をほぐしてやろう」



 痴漢男の手は、まるで指一本一本が触手のように私の胸で蠢く。胸全体を刺激する動きはなんだが、弱点を探しているようで――。



「…………あッ!!」



 痴漢男がある大事な箇所を触れた瞬間――全身に電撃のようなものが走った。何この感覚ッ!?



「…………くっ」



 ジンジンと火照る胸から手を離した痴漢男は、次に全身を綿毛のような優しさぜなぞる。ゾクゾクとした感覚が背筋に走る。



「ひゃ、や、やめっ! そ、それ変になるぅ! だ、だめぇ!」



「断る」



 不思議な感覚だ。ただ彼は全身を触れているだけなのに、まるで神経を直接撫でられているような敏感さであった。体が麻痺して悶えることも出来ない私は、ただひたすら今まで感じたことのない刺激に翻弄されていた。



「――――――――ひぐぅッ!?」



 ――と、全身を触れていた筈なのに、唐突に痴漢男は私の大事な所に触れた。完全に不意を打たれた。



 男は、触れた、触れただけなのに……。



 頭が、真っ白になる……!



「なんで……なんで……!」





 ――なんでこんなに気持ちいいの――ッ!?


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