第8話 女子高校生 絶望する
「みんなを助けるプランって、具体的にどういうものなの?」
声を潜ませながら、私は痴漢男に聞く。ちまにも私は現在進行形で尻を揉まれながら担がれています。どうしてこうなった。
「簡単だ」
痴漢男は自信満々の口調で私の尻を叩く。……何故叩くッ!?
「巨乳が動けないのなら、俺が代わりに動けばいい。俺が職業を発動して盗賊どもを蹴散らせばいいのだろう?」
「……まぁ、その方法でもいいと思うけど……。アンタ、自分の職業が何か分かってるの?」
「ふん。分かってる訳が無いだろうが。今日ここに転生して来たばかりだぞ? 馬鹿にするな」
「だから何でいちいち偉そうなのよ。その自信はどこから出る訳?」
「そりゃ俺はエロに関連する事で失敗した事がないからだ。お前の体を弄ぶことが出来る権利を得た今、俺はどんな試練も尻を撫でまわしながらでも超えて見せるぞ?」
「ああッ! だからって尻を揉むな尻を!」
……コイツ、初対面から思っていたけど、ただの頭ピンク色の馬鹿なのでは?
……私を助けるために檻に入ってくれたり、複数の作戦を立ててくれたりと有能っぽい行動はしているのだけど、どうも彼のセクハラ行動が全て打ち消してしまう。いや、むしろマイナスにめり込んでいる。
――だけど。私が役立たずである今、頼るのはこの痴漢男しかないんだよねぇ。
「おい巨乳。お前はどうやって職業を発動させた? 尻文字で説明しろ」
「痺れて動けねぇよ! って言うか動けてても絶対しないから! ああもうっ! これ以上お尻ペチペチ禁止ッ!」
「ペチッ!」
「私の尻を叩いた音を返事代わりにするなぁ!」
先ほどまでのシリアス雰囲気はどこへやらである。馬鹿はどうやら緊急時でも馬鹿であるようだ。馬鹿は死んでも治らないって言葉があるが、馬鹿は異世界に転生しても救いようのない馬鹿であった。……馬鹿って何回言うんだよ私の馬鹿。
「……そうね。多分職業の発動の条件は――……頭で強く念じたからからかなぁ?」
「強く念じた? 曖昧だなぁ。具体的な説明を喘ぎ声で」
「もういいからそれ。しつこい! ……私の場合は、盗賊らを倒すための力が欲しいって念じた時に職業が発動したかな? 多分だけど」
今まで深く考えていなかったけど、そもそも何故私の職業は『紅蓮騎士』なのだろうか? 確かに理不尽から守りたいと思ったけど、それも職業に関連しているのだろうか――。
……もし『願い』が職業になったのであったら……アレアレ? なんだか嫌な予感が……。
「ふむ。力を念じるか……」
痴漢男はそう呟くと、急に思案顔になった。イケメンと言っても支障がない程整った顔の痴漢男が真剣な顔をすると、見栄えは非常に良い。これだけでコロッといってしまう女性もいるのでは?
黙っていればイケメン。今は布を守っているけど、彼の服装は異世界人とは違う現代的な服であった。……恐らくだけど、私と同じ世界で同じように死んで転生されたのだろう。
「――――――――」
痴漢男がほんの数秒だけ目を瞑ると――次の瞬間カッ! と擬音が出てきそうな勢いで目を見開いた。
すると、彼の目の前に――私と同じように空間からウィンドウ画面のようなものが現れた。
『痴漢魔導士』と。
「…………………………」
「…………………………」
絶望である。唯一の望みが一瞬で絶たれたような感覚。ガンダムで言えばアムロがジオン軍に願ったような絶望感。ポケモンで言えば最初の草むらでボーマンダLV.72。ドラクエVで言えば結婚してないのに石化。
……とにかく、絶望的過ぎる職業の名前である。私が『痴漢魔導士』なんて職業なら間違いなくひた隠す。こんな職業「自分、犯罪者ですよ~」って宣言しているようなようだ。
どう考えても、この職業で盗賊どもに勝てるとは思えない。
「…………ふむ」
痴漢男改め――『痴漢魔導士』は大きく頷いた後、今日一番の笑顔を浮かべた。
「いい職業だ!」
「死ねッ!!」
気に入るんじゃねぇよッ!!
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