pain song

渡馬桜丸

登場人物・舞台設定・梗概

【登場人物】

・ダイアン・クロウ…無骨で無口な青年。終戦間際に受けた怪我が原因で地方の病院に入院している。妹のアンジーをなにより大切に思っている。


・アンジー・クロウ…ダイアンの妹。十六歳の少女。兄とは対照的に人好きのする外見、性格。


・ウェルダン・ザ・プッシーハンド…畜産業に勤しむバンダースナッチ・カンパニーのボス。ダイアンと同郷。彼の見舞いに訪れる。


・ヨーク…古強者の情報屋。畜産業者への復讐を誓うダイアンの協力者。


【舞台設定】

地方都市、ダイアンが入院している病室。戦争が終結したばかり。

数年後、マルドゥック市(『マルドゥック・ヴェロシティ』中盤~『マルドゥック・スクランブル』序盤と同様の時系列)。


【梗概】

年の離れた妹アンジーの生活を支えるために従軍したダイアンは、終戦間際に負った傷が原因で長期入院していた。ある日、奇妙なことが起こる。見舞いに訪れるはずだったアンジーは姿を見せず、代わりに男が現れた。

新しくウェルダンと名乗ったその男は同郷であったが、けっして好ましく思えない、警戒すべき男だった。気さくに話しかけるウェルダンに緊張を解けないダイアン。やがてウェルダンは、アンジーの話を始める。嫌な予感がして話題を切り替えようとするダイアンだったが、ウェルダンは応じない。ついには、アンジーが切り刻まれ、商品として売りさばかれたことを知らされる。さらに妹の大事な部分が、ウェルダンの左手に移植されたことも。絶望の中、ダイアンは絶叫する。

数年後、バンダースナッチ・カンパニーへの復讐を誓ったダイアンはマルドゥック市に身を置いていた。ヨークという情報屋の協力で彼らの情報を得ていく中、どうあっても自力では敵わないことを痛感させられる。

ヨークの提案。ウェルダンたち以上の怪物をぶつければいい。カトル・カールという眉唾物の傭兵集団。ダイアンは一笑に付すが、ヨークは本気のようだった。

しかしその案が実現することはなかった。ダイアンのもとにヨーク名義で届いたディスク。中身は、バンダースナッチ・カンパニーに切り分けられる、ヨークの無惨な姿だった。ダイアンはさらなる絶望を知る。

さらに数年が過ぎた頃、カトル・カールが実在し、そして壊滅させられたことを突き止めたダイアンは、それを成し遂げた男とコンタクトを取ることに成功する。

ディムズデイル=ボイルド。彼に復讐の手助けを請う。はじめは袖にされるが、もう復讐心以外、自分にはなにもないという言葉にボイルドが反応する。別の任務を遂行する過程で彼らを利用し、消すことを約束してもらう。その際にボイルドが出した、ひとつの条件。復讐を終えたあと、己になにが残ったのかを伝えること。

数ヶ月後。ダイアンは元死体安置所の地下駐車場で、細切れになったウェルダンの残骸を見る。

ボイルドの問い。いま、お前になにがある。

ダイアンの答え。なにもない。なにも。ただ、空虚な気持ちで満たされている。虚無しか残っていない。

ボイルドは確信を深めたような表情を浮かべて去っていく。ダイアンは復讐を遂げた充足感を得ることなく、呆然と立ち尽くすばかりだった。

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