第四章 洞窟の夢5
ルーフェンに、風の竜がどうなったのか、なぜ活動を停止するようなことになってしまったのかを訊ねると、なにもわからないという答えが返ってきた。夢で出会った風の竜も、そのことをなにも教えてはくれなかったから、ルーフェンがなにも知らないというのも仕方のないことなのかもしれない。
結局、すべては謎のまま、セレイアに向かうしか自分たちにできることはなかった。
翌朝、旅支度を終えたユヒトたちは、宿を退去し、馬を町の外へと向かわせた。すると前方に三つの馬影が見えてきた。
近づくと向こうもこちらに気づいたようで、馬上の人物が声をかけてきた。
「よう。あんたたちももう旅立つんだな」
それは、昨日会ったファラムという男だった。ファラム以外の二人の男も、たくましく強そうな男たちだった。
「これはマムロ村ご一行さん。きみたちもちょうど今旅立つようだな」
エディールが答える。
「なんだ? 知り合いか?」
ギムレがすかさずそう問うと、エディールは言った。
「昨日少し彼、ファラムというんだが、彼に宿の外で偶然会ってね。彼とわたしは一応旧知の仲なんだ。それで、彼らもセレイアに向かっているということを聞いたのだよ」
「なに? それなら俺たちは同志というわけか。それは奇遇だな」
ギムレの言葉に、ファラムがくすりと笑いを漏らした。
「同志。言われればそうとも言えるな。だが、見方を変えれば目的を同じとする敵であるとも言える。俺は仲良くあんたたちと旅するつもりもないんでね。遅れを取らないためにもさっさと旅立つことにするよ。では精々あんたたちも頑張りな。俺たちのがたぶん先にセレイアにたどり着いてるとは思うがな」
ファラムはそう言うと、他の二人とともにその場を去っていった。
ギムレはしばらく呆然と彼らの去っていったあとを見ていたが、急に猛然と怒りだした。
「なんだあいつら! こちらを馬鹿にしくさって! あんなやつらが同じ使者だとは許せん! 絶対にやつらにだけは負けるわけにはいかん!」
「珍しく意見が合致したな。確かに彼らにだけは遅れを取るわけにはいかない。ファラムのやつ、今に見ていろ」
エディールも静かな炎を燃やしている。ユヒトも二人と気持ちは同じだった。
「行きましょう。僕たちも。ゆっくりしているわけにはいきません」
ユヒトたちは東の太陽の日差しを浴びながら、ワビテ町を旅立っていった。
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