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「ん~温まるわぁ。今夜はぐっすり眠れそう」

「ここでは寝るなよ」

 ちょっと行ったら自分のうちがあるんだからな。大男を泊めるなんて絶対に嫌だ。

「何よぉ、小ざっぱりしている部屋なんだからあたし一人くらいいいでしょうに」

「ヤダ」

「もう、けちね」

 大体明日は仕事なんだ。寝落ちするほど飲めねぇだろうが。

「んで、なによぉ、あたしを呼んだ理由は」

「え、別に呼んでないけど。もし暇してたら一緒に飲もうかなって思っただけで」

「え、だって家に来いって」

「ミケの返信の後にちゃんと暇ならって送ったし・・・あ、既読ついてねぇわ」

 はぁぁ、と何故かミケがため息を吐く。おい、なんか失礼だな。

「まぁなんか重大なことが無くてよかったわよ」

 何それ、俺からミケに何かがあるみたいじゃん。

「や、別に何もないわよ」

 んー、その言い方もなんか怪しい。遅い時間でもやって来たのには既読が付いていない以外の理由があるな?

「何でもないって」

「・・・イツキちゃんだ」

 まぁその表情を見れば分かるわな。イツキちゃんの名前を出しただけで目が少し開いたもの。

「何言ってるのよ」

「なに、何かあった? イツキちゃんと」

 ついニヤニヤしそうになるのを奥歯を噛んで耐える。だってイツキちゃん、少し前にうちの店に来たんだもん。

「何もないわよ」

「へぇーデートとかもしてないわけ?」

「デ、デート?」

 あ、こりゃやっぱしているな、デート。イツキちゃんも頑張っているってわけか。

「あ、あれはデートじゃなくて、イツキちゃんの行きたいところとあたしの行きたいところがたまたたま一緒だったってだけで」

 おうおう。男相手のときはちょっとコンビニに行くだけでもデートだなんだって言っていたのに。

「へぇ、イツキちゃんと仲良くできてんじゃん」

「や、別にそんなんじゃ」

「で、いつ告白すんの? あと三ヶ月ちょっとしかないけど」

「何の話?」

「こっちの話。で、どうなんだよ?」

 じっと目を見て言うと、ふいと視線を外してミケは黙りこむ。まだまだ告白は先ってことか。

「・・・女の子を好きになったのが怖いとかじゃなくて。普通に怖いだけよ。振られたらって思ったらね。彼女の気持ちも、あたしには分からないし」

 んー、まぁそうっちゃそうだけどさ、

「ま、恋愛は自由だ。ミケの納得のいくようにしたらいいさ」

 それが恋愛ってモンだろ。でもま、早く鏡がこちらを向いていることに気づけばいいのに、とは思わずにはいられないわけで。

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