鏡に映るのは誰?
カゲトモ
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「おー、やっとのご到着かい」
待ち合わせ時間はとうに過ぎていて、時計の針は頂点を回ってしまった。シンデレラの魔法は解けてしまう時間だ。
「だって仕方ないじゃない、電車が遅れていたんだもん」
「えー、本当にぃ?」
「本当だってば、ほらっ」
そう言ってミケが見せたのは小さな紙切れ。遅延証明だ。まさかこんなものまで持ってくるとは。ちゃんと信じてるってば。
「あぁもう、電車が遅れるなんて最悪。すっかり身体も冷えちゃったわ」
「ってかなんでそんな遠い銭湯まで行ってんの?」
俺としてはあんまり遠い銭湯には行きたくないけどな。風呂上りに電車はキツイ。
「あそこは美容のメニューが多いのよ。あたしでも利用できるし」
「メンズメニューがあるのか」
「紹介しようか?」
近いところだったら行ってもいいけどなぁ。オネェのミケが行くくらいだから、施術は良いんだろうけど。
けれど、電車が遅延していて遅くなるようなら一本連絡くれれば良かったのに。特に大切な用事があった訳でもないし。
「充電が切れたのよ」
それでこんな遅い時間でも律義に来たってわけね。良かったな、俺がまだ寝ていなくて。
「あー、もう。酔って線路に入っちゃうくらいならお酒なんて飲まなきゃいいのに。他の人の迷惑も考えて欲しいわよねぇ」
なるほど。遅延理由はそれか。
「じゃぁ今日は酒飲まない?」
「熱燗にして」
もう六月になるってのに?
「夕方まで降っていた雨で外は寒いのよ」
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