月的少年

「ボク妊娠したと思うんです」

そう言って町の産婦人科にやって来たのは空の上のお月様でも眺めているような惚けた顔をした中性的な少年だった。受付の女は問診票の性別欄のチェックを見るまで、彼を少女だと思っていたらしい。

少年の月色のお腹がぽっこりと

「一人で自慰行為をしていたんです。そしたら…。あ、性行為の経験はありません」

医者はこの少年は狂っていると考えた。だが、少年の異常さと美しさとにあてられた彼は、少年を騙して真っ裸にしてしまった。医者は少年のペニスをいじくって「うん、ちゃんと機能してるね」なんてそれらしいことを言って誤魔化した。少年は終始上の空だった。

少年の月色のお腹がぽっこりと

エコーでお腹の中を撮影したところ、確かに小さな人の影が映った。

少年の月色のお腹がぽっこりと

それから半年ほど経ったある日、帝王切開で取り出されたのは元気な男の子だった。医者はすぐに遺伝子の鑑定をした。その子供は全くもって少年の遺伝子のみから生まれていた。


十数年後、少年は麗しさを保ちつつ妖艶さを増していた。赤ん坊はちょうど彼が妊娠したぐらいの歳にまで成長していた。その姿はかつての少年に瓜二つだった。

かつての少年は自身そのものである少年を身体中愛撫して可愛がる。少年が生まれた日から毎日毎日欠かさず愛撫して可愛がる。かつての少年は少年のお月様のような臀部が大好きだった。少年はお月様でも眺めているような惚けた顔をして、かつての少年に抱かれたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る