いつもそばにいて、いつだって守ってくれる。
海洋ヒツジ
プロローグ
ワタシにはたった二人の友達がいる。その二人はとっても変な子。普通とは違う子。
今日は二人について話したい。
一人はモジャ。モジャモジャ頭だからモジャ。本当の名前じゃないけど、本当の名前は聞いても教えてくれない。
モジャは遠い所から来た男の子らしい。周りの人とは違って肌は茶色。
いつも明るくて人のマネをするのがとても得意。
この前だってワタシが学校から帰る時にものかげからひょっこり顔を出して、担任の藤堂先生のマネをしてくれた。
腰を曲げてほっぺたを膨らませて目を細めれば、ほら、藤堂先生にそっくり。ワタシは大笑いしちゃって、とんだハジをかいた。
これで「席につきなさい」ってカエルみたいな声で言われたら、絶対にワタシはどうかしてしまうのだけど、彼は声マネは得意じゃなかった。
彼は言葉がしゃべれなかった。
そのことについては残念だけど、ワタシはそれでいいと思う。だって彼はその分誰よりも明るい人だから。
声がないってことをバカにされたとしても、彼はきっと大きく笑うんでしょう。ワタシはそんな彼が大好きだ。
言い忘れてたけど、モジャはユーレイだ。
体は透き通ってて、ワタシのほかには誰にも見えない。
腰から下がない代わりに、自由に空を飛べる。
そんな人。
もう一人はビーコ。誰にでも突っかかる暴れ牛みたいな子で、ある日牛のお肉のことを「ビーフ」じゃなくて「ビーコ」なんて言ったから、その日から彼女はビーコ。ぴったりの名前だしね。
ワタシも間違えて覚えていたことは秘密。
彼女はワタシの幼馴染。ワタシと違ってとても気が強い。
ワタシは気が弱いからクラスの子にいじめられるんだけど、ビーコはいつもワタシを庇って、ワタシの言いたいことを代わりに言ってくれる。おかげでいじめっ子はワタシに近づかなくなった。
でもそのせいでビーコに話しかける子も減っちゃったのが心配。
言い忘れてたけど、彼女はワタシの心に住んでいる。
自由に動かせる体はないけど、その代わりいつまでものんびり過ごしている。
いつもはワタシの中に引きこもって、気が向いた時にワタシと入れ替わって、ワタシの口でしゃべる。
そんな人。
ワタシと二人は友達。二人もお互い友達同士。
いつからかそばにいてくれていて、いつまでも離れたくない不思議な人たち。
でも、ワタシも数月後には中学生だから、なんとなく分かる。
彼らと過ごせる時間は決まっていて、その限界はもうすぐだってこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます