告白

神原 遊

第1話 歪み

いま、あなたが私を愛してくれているのを感じます。 

今までにも、私を愛してくれた男性がいなかったわけではありません。

ですが私はほとんどの男性たちに対してこの上なく冷酷でした。

これまで私が男性たちにしてきた仕打ちを知ったなら、あなたに背を向けられてしまうことでしょう。


私が怖いのは、私自身があなたに惹かれ始めていることです。

これまで、どんな人に愛されようと私の心は冷えていました。

私はうまく立ち回り、彼らから搾取し、そして彼らも私から性的な搾取をしました。


あなたが私に思い描いている姿とはあまりにもかけ離れ、私がいかに汚れた女であるかをあなたが知ってしまうなら、恐ろしさに狂いそうになります。


でも、あなたに本当の私を知って欲しいと切望している自分もいるのです。

だからあなたに手紙を書きます。私の醜く、汚い、異常な部分もすべてさらけ出します。


この手紙は、あなたの目に触れることはないでしょう。あなたに向けて書くとしても、私は自分の闇と向き合うためにこれを書くのです。


若い頃の私は、その後の私と比べると随分違っていました。

私が男性に対して嫌悪感を持つようになったのは最初の結婚が原因でした。


思い出したくはない、やはり今となっても向き合いきれない最悪の結婚生活でした。浮気と精神的な暴力に悩まされ、私はぼろぼろになりました。それでも何年も、離婚を決意することはできませんでした。最低な夫でも、私は彼に依存していました。その頃は、彼がいなくては生きてゆけないと思い込んでいました。


でも事態は意外とたやすく変化しました。

就職活動をして、仕事を見つけたのです。

後になって振り返れば、子供はいなかったので難しい状況ではありませんでした。


繰り返し、心底耐え難い思いをした挙句の決断でしたが、もっと早くそうすれば良かったとどれほど思ったでしょう。仕事を見つけ、職場から電車で数駅のところにアパートを見つけ引っ越しました。離婚届を郵送し、あっさりとそれは返送されました。呆気ないほどの出来事でした。


この結婚生活で、男性への憎しみが育つには十分でした。そして不思議な事ですが、私が男性を憎むほどに、男性が私に引き寄せられるようになったのです。私はそれを利用しました。元夫に復讐するかのように、私は男性たちを操り、搾取し、煩わしくなれば捨てるという芸当を身に着けてゆきました。それは今の私を築く上で大いに役立ちました。


いま、お金にも仕事にも不自由しない身でいられるのは、私にお金やエネルギーを注いでくれた男性たちのおかげです。もちろん私も支払いをしたつもりです。彼らが私に求めたものは普通の性行為のみではありませんでした。彼らの歪んだ欲望にも私は応じました。そして私は彼らのそういう部分は決して嫌いではなかったのです。


彼らはどこかで私の歪みに気付いて、引き寄せられていたのかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る