大切なもの

YUKA

第1話

ともだち




 ひとりぼっちの少年が出会ったのは


同じく、ひとりぼっちの小さな少年だった。






 目を開けると、辺り一面真っ白な世界。


ここは、((人間界と天界の中間に位置し、ゆいつ人間と神が共存する世界))



「太陽の熱が心地よい


このまま、目を閉じて、いっそのこと 消えてしまえばいいのに 」


色のない声が  ただ ただ青い空へとのぼっていく

 


 戦の絶えないこの世界


暗くて

先の見えない道を 人々は自らの心を明かりとし、自らの足で進んでいく

途中、道を外れて消えていく者 立ち止まり悲しみに暮れる者、喜びに声を上げる者

様々だ。


少年はというと、明かりをともすことも、前へ進むことも止めてしまった。


この世界が、彼の心から光を奪ってしまったのだ・・・・・





「うっうっ、、、、」


「ん??」


 そんな、声にハッとし、辺りを見回すと


すぐ側に、全身傷だらけの小さな男の子が、倒れていた。



 今さら、彼の心を動かすものなんて、この世界にありはしないはずだったが





なぜか、そのとき彼の体は自然と子どもの方に向かっていた。


子どもは、意識はないが、呼吸はしている。


急いで、その子を抱いて自分の家に向った。





彼は、怖かった とにかく、怖かった

自分が自分じゃないみたいで



まるで何かから逃げるように必死で足を動かした。


 


家に着くと、医者を呼びケガの手当てをしてもらう。


そこまでして、やっと彼の肩から力が抜けた・・・・・・









「うんっつ」


「気がついたか?」


その子の目を見て、俺は一瞬固まってしまった。


なぜなら、その子が俺と同じ目をしていたから


誰も、信じない。何も、感じない。そんな寂し目をしていた。





「。。。。。。」






しばらくの沈黙が続き。その子が、とうとう口を開いた。




「・・・・どうして、僕・・を助けたの?・・・僕なんか、必要ないのに」



なぜだか、分からないけど。胸が熱くなり、いつの間にか

その子を抱きしめていた。



おにいちゃん。泣いているの?

胸の奥で生れた一つの波が周囲に広がり


やがて


少年のほほをつたって流れ落ちる。




❸           「空へ」

 



それから、二人の生活が始まった。


二人とも、どうやってコミュニケーションをとればいいのか分からず。

一ヶ月くらい、


ぎこちない関係が続いた。

しかし、日々一緒に生活していくうちに自然と二人の心に変化が見え始めた。 




子どもsaide

 「おにいちゃん!!いつも、ありがとう」


 おにいちゃんは、あの日。


僕のために泣いてくれて、怒ってくれた。


「必要ない。なんて言うな」って


すっごく、うれしかった。何より、僕をぎゅっと抱きしめてくれたことがうれしかった。




少年saide

 「ありがとう」そんなことを、言われたのはいつぶりだろう。


おれは、何もしてないのにな。


こっちこそ、お礼を言わなければ。俺は、お前の無邪気な笑顔にいつも救われている。


仕事で、帰りが遅くなった時は


いつも必ず、寝ずに待っていて「おかえりなさい」と言ってくれる。


家に帰るのが、楽しみになった。待っていてくれる人がいることがこんなにもうれしいなんて知らなかった。


少年の心に暖かいものが流れてく。




無くしたはずの二人の心の光(あかり)が

いつの間にかお互いの言葉、行動によって呼び起される。





しかし、そんな幸せも長くは続かなかった。


なぜなら、

隣国同士の戦争の火種がこの国にもやってきたからである。







「なんで、、、僕のために」



少年は、彼の体を庇うように抱き抱えたまま地面に横たわる。

もう、動くことも、話すことすらままならないのである。

「........。」





「なんで!!!!!!」

大粒の雨が空から二人を包み込む。

少年は、気づいていた。

自分の中に流れる音に

これはただの、音ではなく

心の音色だと。


誰かを想い、愛する音色。




振り絞るように

「、、あたりまえだろ。


だって友だちだから」




「......友だち?」





「、、、、、うん。大切な人のこと」





「....と..もだち....」

その言葉は、この子の中におだやかに流れる。

とても、心地のよい音色となって

今も、止まることなく

流れ続けている。




この日、二人の物語は終わりを告げた。


けれど、「友だち」この言葉が二人をまた、引き合わせるだろう。








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大切なもの YUKA @yuka460

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