女神から能力を授かった筈なのに俺YOEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!

昆布 海胆

第1話 魔物の住む森の奥に捨てられました

「それで貴方はどんな能力をお好みですか?」


俺は今良くある死んで女神様に違う世界で新しい人生をうんたらかんたらむにゃむにゃポーンな訳だ。

そして、好きな能力を与えてくれるって事で考え込んでいるわけですよ。


「あの・・・出来ればごにょごにょ・・・」


最強でハーレムでアナタも俺の女にしたいです!

なんて口にしたらきっと天罰で最悪なスキルを与えられるんだろうと考えて口ごもってしまった。


「ふむ・・・貴方は今までの人生であまり友達が居なかったみたいですね」

「あっえっ?」

「いいでしょう、貴方には沢山のお友達が出来る能力を授けましょう・・・さぁおいきなさい!」

「おいちょっと待てって女神さまぁああああああああああああん!!!!」



とまぁ目覚めたらハルクって冒険者な訳ですよ。

正確には記憶が戻るまで冒険者をしていたって感じなわけですが・・・


「おいハルク!分かったか?お前はここで追放だ!」

「はえっ?!」


突然言われたのはパーティメンバーからの追放宣言であった。

そして、前世の記憶と現世の記憶が入り混じる感じに混乱しつつも頭の中が整理されてきた。

俺は貧乏な実家を飛び出して冒険者になった。

だが冒険者ギルドで調べてもらった結果はあまりにも低いステータスで使い物にならないという事実であった。

一般人の平均を全てに置いて下回り魔法も使えないのである。

絶望のどん底に落ちかけていた俺を拾ってくれたのは今現在目の前で偉そうにしているバーディーであった。


「お前弱いって言っても荷物持ちくらいは出来るんだろ?だったら俺のパーティに来いよ」


そう、バーディーのパーティーは魔法剣士のバーディー、シーフのミスト、魔道士のクリムというバランスの取れたパーティであった。

だがギルドの依頼を達成するついでに倒した魔物の素材やアイテムを持ち運ぶのに裂く人員が居ないもの確かであった。

そこで安く使える俺の様な人間を仲間に加えたと言う事だったのだ。

しかし、そこで待っていたのは過酷な日々であった。

女神様がどんな能力をくれたのか分からないまま使えないと文句を言われ続け報酬は全員の10分の1。

と言っても荷物を持ち運ぶ事しかしていないのだからそれも仕方ないだろう。

運搬が出来るようになった事もありバーディー達は次々と依頼を達成しDランクのパーティが短い期間でBランクにまで上り詰めたのだ。

そして、今回の依頼に出る時にもう1人仲間が加わった。

タンクのミシッドである。

彼は敵の攻撃を受ける盾となり仲間を守る職業で強靭な体とスタミナを所持していた。

勿論力も強く今回の荷物の殆どはバーディーの指示で彼が持っていた。

そして現在、依頼の品を採取し終わり魔物の森の最深部で俺はパーティを追放されようとしていたのだ。


「ま、待ってくれ。こんな所で1人放置されたら死んでじまう!せめて町まで・・・」


そこまで言った俺の顔を元々の3人はニヤけながら見下していた。

そうか・・・こいつら元からここで俺を捨てる気で・・・


冒険者ギルドの規定でパーティメンバーが死亡した場合はそのパーティのランクに応じて建て直しが直ぐに出来る様に見舞金が支払われるのだ。

特にバーディたちはBランクパーティである。

その為、支払われる額は非常に多い。

こいつらは自分の命よりも金を取ったのだ。


「まぁせめてもの情けだ。武器くらいは要るだろ?ほらっ」


そう言ってミストから投げ捨てられたのは1本の短剣であった。

しかし刃先はボロボロでとてもまともに使えるとは思えないその短剣、だが素手で居るよりかはマシと判断しそれを拾う。


「よし、銀貨30枚だ」

「へっ?」


その言葉に唖然とした。

銀貨30枚、それは俺が所持している全財産であった。

それでこの短剣を買わせようとしているのだこいつ等は・・・


「要らないなら良いんだぜ?短剣は返してもらうけどな」

「ぐ・・・わかり・・・ました・・・」


素手よりかはマシ、特にここで死ねばお金なんて持ってても意味は無いのだ。

そう考えて俺はミストに全財産の銀貨30枚を手渡した。


「さて、それじゃあ名残惜しいが達者でのぅハルク」


クリムが嬉しそうにそう告げて彼等は歩き出す。

その後ろを付いていけば助かるかもしれない、だが動こうとしたらバーディーがチラリとこっちを見て口にした。


「そうそう、後ろから付いてきたら魔物と間違って切り殺してしまうかもしれないから気をつけろよ」


その目はもう仲間ではなくゴミを見下す視線であった。

こうして最弱の俺は魔物の住まう森の奥深くに1人所持金0、武器はボロボロの短剣1本だけで捨てられたのであった。

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