タイムスリップ
カゲトモ
1ページ
「いやー本当悪いなって、せっかく誘ってもらったってのに」
耳元でチョキチョキチョキ、とリズミカルに聞こえていた音が一瞬止んで鏡越しに松林と目が合った。
「いや、多分花菱は無理だろうなって思っていたから」
「あ、まじで?」
「だってお前一度も顔出したことないじゃん、そういう集まりに」
「えー」
一回くらいは俺だって・・・あれ、それってどこの一回だっけ?
「それにこの前のときもこうやって俺のところに髪を切りに来たしな。確かその前も」
「あー、そうだっけ?」
「そうだよ」
どうか薄情な同級生だと思わないでほしい。同窓会に顔を出せないからと、一番近い同級生の顔だけでも見に来ていることを。だってなんか懐かしくなって、ちょっとだけでも顔を見に行こうかなって思ってしまうんだもんよ。
「それなら毎回俺のとこに来てくれたらいいのに」
「そんなこと言って、松林人気過ぎて予約取れないじゃん」
今回はキャンセル枠に入れてもらえたから良かったものの、今日を逃していたら多分一ヶ月は先だったはず。
「いやーごめんねー、こう見えて俺カリスマ美容師だから」
「いや、もうカリスマ美容師って死語なんじゃないの?」
「え、そうなの?」
一瞬のアホ面の後にくしゃりと笑う顔。こういう人懐っこいところとかトークセンスに彼の魅力があって、それもお客さんの絶えない理由なのかもしれない。
いや、もちろん技術面もあるだろうけど。
「松林は行くんだろ?」
「んー、まぁ一応ね。土曜だけど、休めない訳じゃないし。他にスタッフもたくさんいるしね。花菱は仕事だもんな」
そこが個人店のデメリットでもあるよな。自分が居なければ店を開ける事すらできないもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます