第7話 4人でゲーム
「ゲームしようぜ!」
特別相談部が創立されて1週間。
今日は相談者がいないので自由時間の日だ。
この部活は創立されたばかりなのでまだ相談者が全然来ない。
だから相談者が来ない日は自由時間として部員達は好きに遊んでいいらしい。
この時間は部員同士の交流も含まれているから一応活動内容にも反していないらしい。
部室には俺と有紗、それから飛鳥と月野がいる。
花蓮先輩は今日は生徒会の方に顔を出すらしい。
ていうか今までこの部活にいたのがおかしい。
あんた生徒会長なんだから生徒会室にいるべきでしょっ!と俺は心の中でつっこんでみた。
「はあ?ゲーム?」
飛鳥が不機嫌そうに言う。
「そうだ。仲を深めるにはやっぱりゲームが一番だ!な、ムーンナイト?」
「うむ。我とクリムゾンの絆は『デモンズイート』によって結ばれたのだからな」
「『デモンズイート』??」
飛鳥が首を傾げる。
「『デモンズイート』とはチーム連携型ハンティングアクションゲームで最大4人で協力しながら強大なモンスター達を倒していくっていうゲームだ。お前以外の俺達3人はこのゲームを相当やり込んでるから教えてやるぞ」
「ふーん。3人でやってれば?アタシはやんないから」
飛鳥はそっぽを向いてしまった。
「そういうなって面白いからさ。それにお前には有紗とも仲良くなってもらいたいからさ」
「兄さん……」
「そこ、見つめない!分かったわよ…。でもアタシ、ゲームなんて全然やってこなかったからできるか分かんないわよ」
「大丈夫だって。俺達がサポートすっから。」
俺は鞄の中を漁り、携帯ゲーム機を取り出した。
「これが今人気の携帯ゲーム機『プレイPスティングSベータβ』だ!こういう時もあろうかと常に持ち歩いているのだ。ムーンナイトは今日も持ってきているよな」
「もちろん」
月野も自分の鞄からPSβを取り出す。
「ここに俺と有紗、そしてお前の分で3つある。これをお前にやるから、お前も混ざってくれ」
俺はこの前新しく買っといた赤いPSβを飛鳥に渡す。
「これ、貰っていいの?なんか新品ぽいっなんだけど……」
「あぁ、お前のために買っといたからな。遠慮せずに受け取ってくれ。これでいつでも遊べるからな」
俺はこれで大人数でゲームが出来ると思うと嬉しくてつい笑顔になっちまった。
「そ、そんな顔で渡されたら貰うしかないわね…。」
「あぁ、ありがとう」
「……で、どうやってやるわけ?」
俺は早速飛鳥に電源の入れ方を教える。
俺の指示に従い飛鳥はPSβの電源を入れる。
起動画面が出て来てやがてホーム画面に移った。
「ていうかアンタ毎日ゲーム機持ってきてたんだ…」
ゲーム機を操作しながら飛鳥が聞いてくる。「あぁ、ムーンナイトとやる時があるかなぁって」
「ふーん……」
飛鳥は『デモンズイート2EXPLOSION』のソフトを起動させる。
「ていうかアンタ自分は名前で呼んで欲しいとか言っといてアタシは名前で呼ばないんだ…」
飛鳥がまた不意に聞いてくる。
「ん?だって勝手に名前呼びしたら怒るかなって」
「でもあの女に名前で呼びあってるじゃない」
あの女とは花蓮先輩のことだろう。
「それは、本人がそうしろって…」
「じゃあアタシもそうしなさいよ」
飛鳥はまたそっぽを向いて俺に言ってきた。
ーーこいつ不機嫌な時と照れている時は絶対にそれやるよな……。癖なのかな。
「分かったよ。恵美梨。なんか言い難いからエミとかでどうだ?」
「……っ!」
飛鳥は俺がエミと言った瞬間驚いたような顔をした。
「……それはダメ。幼馴染みにそう呼ばれてたから…」
飛鳥は何だか悲しそうな顔をして俯いた。
「……お前何かと幼馴染みがどうとか言うけどそんなにそいつの事が好きなのか?でもそんなに悲しそうな顔してんなら今は会ってないとか?」
「……」
飛鳥は少し黙り込んでやがて顔を上げた。
「…そうよ。アタシは昔その子と遊んでいて大好きだった。もちろん今でも彼の事を想ってる。でも今はどこにいるか分からない。どこかに引っ越しちゃったから」
……ん?それって…俺と同じじゃないか。
でも違うよな……。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「なに?」
「俺にも昔、仲の良かった女の子がいたんだが、それってまさかお前なのか?」
「はあ?何言ってんの?アンタがあの子なわけないでしょ。調子に乗らないでよね」
「そうか…。すまなかった……」
違うか……。じゃああの子は一体誰なんだ?
「じゃあ普通に恵美梨でいいな」
「……うん」
「じゃあ俺達も起動させるぞ」
俺が言って有紗と月野もPSβを起動させた。
「俺がホストになるけどいいよな」
「ホストって?」
恵美梨が首を傾げながら言ってきた。
「ホストっていうのはチームのリーダーみたいなもんだ。その人がミッションを受注し、それを通信しているみんなで挑戦することができるんだ」
難易度の高いミッションほどいいアイテムが手に入りやすいので、それが受注できるプレイヤーをホストにする方がいい。
「アンタ達は何時間くらいこのゲームをやってるわけ?」
恵美梨が最初の準備をしながら言った。
「俺は500時間くらいだけど」
「500!?」
恵美梨は驚愕の目をしている。
「500って馬鹿じゃないの?どんだけやってるんだっつうの。月野は?」
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれた。驚くがよい。我のプレイ時間はなんと789だ!」
月野が得意げに言った。
「「な、789!?」」
恵美梨と俺が驚愕する。
「789って俺よりやってんじゃん!俺よりもプレイ時間長いやついたんだ」
「どっちもやり過ぎよ!アンタ達本当に何やってんのよ…」
恵美梨は呆れてため息をついている。
「……ま、取り敢えず準備を済ませようぜ」
俺達は黙って準備を進めた。
4人全員の準備が整うと、画面が拠点である施設からモンスターの徘徊する山岳地帯へと移った。
ここはミッションで最も多く使われるステージで大体はここでボスモンスターを狩る。
それぞれが操作する4人のキャラクターがスタート地点に立っている。
このゲームでは自分の分身となるキャラの性別、顔、体格、髪型、髪の色などを細かく設定でき、装備によってグラフィックも変化する。
恵美梨の装備は初期装備で貧弱な格好をしているが、俺達3人の装備はとてもごっつかった。
「アンタ達の装備ごつ過ぎなんですけど。
ていうか花園のキャラ、全然現実と違うんですけど」
俺のキャラは男で、ワインレッドの短髪だ。
「ぷっ、髪は赤いのに髪型は坊主とか変すぎでしょ。ていうかその体格は可笑しすぎでしょ」
恵美梨が馬鹿にしてくる。
「それにキャラの名前も 【クリムゾン】とか。そういえばアンタの名前も紅蓮だったけど全然似合ってないよね」
「っさいな!名前は親が決めたんだから仕方ないだろ!ゲームなんだから現実と違っててもいいだろ」
笑いながらダメ出ししてくる恵美梨に憮然として俺は言う。この前月野にはあんな事を言っていたが実は自身のキャラにクリムゾンとつけている。やっぱり紅蓮っていったらクリムゾンだよな。
ちなみに恵美梨のキャラは顔も髪型も体格もまさに恵美梨分身という感じだった。名前もそのまま 【恵美梨】。どんだけ自分大好きなんだこいつ。
月野のキャラは外見も髪や体格は本人そのままなのだが、顔だけは目がくりっっとしていて口元はニッコリのロリ系の顔だった。名前は 【MOON NIGHT】。やっぱりその名前なのか。
有紗のキャラは真っ白な長髪で肌も白く、キャラ名 【スノーホワイト】のように白雪姫のようだ。
「よし、それじゃ狩りに行くぞ」
俺がそう言って、 【クリムゾン】が走り出した。
次の瞬間。
ズバシュッ!!
【恵美梨】が装備した身の丈ほどある巨大なバスターブレードが 【クリムゾン】の背中を切り裂いた。
「おい!?」
いきなり攻撃され思わず叫んでしまった。
しかし 【恵美梨】の攻撃力では 【クリムゾン】の体力はほんの少ししか削られない。
「なにするんだよ、恵美梨!」
「あは、ごめんごめん。ちょっと操作ミスしちゃっただけだから。ていうかこれ、味方にも攻撃できるんだね。さ、気を取り直して狩りに出かけましょ」
しれっと言う恵美梨。
初めてだから操作ミスをするのは仕方ないのだが、俺はどうもあれはわざとじゃないかと思う。
「……操作ミスなら仕方ないな。じゃあ行こうぜ」
俺は感情を押し殺して言った。
【クリムゾン】が走り出し、【恵美梨】と【MOON NIGHT】もそれに続く。
しかし【スノーホワイト】は何故か俺達とは逆方向に歩き出し、ある程度距離が離れた瞬間、
「あーごめんなさい。ボタン間違えましたー(棒読み)」
【恵美梨】めがけてスナイパーライフルを放った。
【恵美梨】の頭に弾が貫通して倒れる。
「ちょっと!今のどう考えても狙ったでしょ!」
恵美梨が文句を言う。さっき自分も同じ事してただろ…。
「貴女だって兄さんのこと狙ってましたよね。そのお返しです」
「アンタさっきまで一言も喋らなかったのにいい度胸ねそれならこっちだって容赦しないんだからね!」
【恵美梨】が【スノーホワイト】に向かって走り出す。
しかし【恵美梨】が追いつく前に【スノーホワイト】の弾丸が【恵美梨】に貫通していく。
「むき~。アンタそれ卑怯よ!」
「卑怯じゃありません~」
それからはずっと2人で仲間割れをしていた。
【MOON NIGHT】と俺はアホ2人を放置して『アクオウ』を討伐していた。
この『アクオウ』は恵美梨用に弱くしてるので最強装備の俺達では1分とかからずに終わってしまった。
……お、ラッキー。絡まった獣毛ゲット。
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