第3話 分かってはいるけど……
……うーん、取り敢えず俺とステラには能力だけで十倍の差がある事は分かった。あと、全体的に精神の数値だけしか強い部分が無いところも。
まぁ、細かい所は置いといて。比較すれば悲しくなるのはどこでも一緒だろう。
「それでリュートさん。僕やステラにある9や7、『魔術師』って何ですか?」
「あ、あぁ。……名前の下にあるそれらは所謂、才能ってやつだ。これくらいだと生まれた時からあったはずだ。この才能は成長するにつれて得る事も出来る。どうやって得るかは分からないけどな」
なるほど固有能力みたいなものか。完全な固有では無いみたいだけど……
後この実力について能力は現時点での自分の強さ、つまりはレベルらしい事が分かった。それ以降からは予想通りの結果で【耐久】が高ければ【体力】が、【精神】が高ければ【魔力】が高くなるそう。スキルは自身が完全に習得した物が、魔法は自身の才能のある属性が書かれるそうだ。
ちなみに魔法の属性も後天的に使える様になる可能性があるらしい。
「へぇ……」
それと能力の数値は初期(現段階で)1が平凡、5は才能あり、二ケタ以降は天才と言われる。最初はリュートさんが8、ミアさんは4だったそうだ。つまり、ステラは普通に天才、俺は一般人という訳だ。
どちらかと言えば嬉しいが、これで腫れ物扱いにならない事を祈ろう。
最後に魔法の属性の数は一、二個が普通、三つは千分の一、四つが百万分の一、五つは一千万分の一だそうだ。ステラは魔法の才能ですら十万に一人の逸材だという事だ。
俺は当然ながらステラもある程度の文字や数字は勉強しているので特に問題は無い。……それにしても凄い才能だよなぁ。将来は安定してそうだ。
さて、ステラの実力が凄まじい事になった翌日の朝。俺はステラと一緒に朝のトレーニングをリュートさんの元、行っている。現在は体を温める程度の運動を行った後のランニングだ。この後は筋トレと武器の肩の練習がある。昼からはミアさんから魔法についての練習も予定に入っている。
……それにしても何故こうなった。いや、ステラは分かるよ? 才能あるし伸ばしたいと思うのは親だからね。でもさ、一般人の俺まで同じメニューを組み込むことも無く無い? 別のメニューでも良いと思うんだ。まぁ、こうなった理由も分かるんだけど……
走りながら昨日の事を思い返す―――――――
『……なぁ、ミア。明日からステラを鍛えたいんだけどさ、どう思う?』
『そうねぇ。ステラちゃんが私達よりも強くなっちゃうのは確実だろうし……でも、大丈夫かしら』
『やだっ。お兄ちゃんと一緒が良いっ!』
『あぁ、心配するな。単にユートの練習量をどうするかって話だし』
『そうよ。そっちの方が二人とも頑張れると思うわ』
『なら、大丈夫』
『あの……僕が拒否する事とか……』
『『『出来ると思ってたの?』』』
『あ、はい』
―――――――うん。義理の息子でも本当の息子みたいに扱ってくれる二人には本当に感謝してるよ。だからこそ、将来に関して安全に生きていける様に俺に力を付けさせようって事も。
それでもさぁ、街を一周ってかなり酷いんじゃないかなぁぁぁぁぁぁっ!
実際、トレーニングの為に起こされたのはまだ夜が明ける前である。ランニングは夜が明け始めてから始まり、現在は半分辺りである。他にも走っている人は何人かいるが汗の量が尋常じゃない。偶にぎょっと見られた事もあった。
街の直径はおよそ七リラ(地球では約五キロ)で合計距離は十キロ以上だ。
「大丈夫、お兄ちゃん?」
「ぜぇ……ぜぇ……はぁ、はぁ。だ、大丈夫」
とまぁ、この様に。他人を心配できているのがその証拠だ。息も切れてないし。やはりこれ位ならばステラにとってジョギングみたいなものなのだろう。ちなみに引率者としてリュートさんがいたのだが、彼は俺たちよりも高ペースで現在二週目だ。毎日三周しているらしい。
……結局、最後の方は体力が尽きてステラの肩を借りながら一周を終えた。俺の様子を見てステラとミアさんは心配そうにし、リュートさんもバツが悪そうにしていた。
水分を補給して汗を拭きとった後はベットで横になっている。今はこの場にいないステラはリュートさんと朝食を食べた後、名残惜しそうにしながらも外で剣の型の練習をしている。
必然的に俺と一緒にいるのはミアさんである。椅子に座って本を読みながら俺の事を見ていて、気分が悪そうだと感じたらお世話をしてくれる。
暫く休憩していたら落ち着いて来た。ミアさんもその変化に気付いた様で立ち上がる。
「かなり顔色が良くなったみたいね。これからの事も含めて魔法は身体強化の練習をしましょうか」
「……はい。お願いします」
「ふふふ。大丈夫よ。今日は魔力を感じてもらうだけだから」
さっきのがまだ尾を引いていたらしい。ちょっと反省していると小走りにこちらへ走って来る音が聞こえる。どうやらステラの練習が終わったようだ。
「お兄ちゃーんっ」
「おっ、と。お疲れステラ」
扉が勢いよく開いたと思ったらベットにダイブしてくる。懐いてくれるのは嬉しいのだが、終わって直ぐに来たのか汗びっしょりのままだ。
「汗を拭いて来なよ。そのままじゃ気持ち悪いだろ?」
「……は~い」
渋々と言った感じだが聞いてくれたようだ。それにしても、不機嫌でも少し構えば良くなるのが未来と被って見えるのは気のせいなのだろうか。……意外と女々しいのかな、俺。
意外な一面を知り、驚きつつもミアさんが用意してくれた椅子に移る。椅子は俺以外にも三つあって(ステラとミアさんのだろう)、真ん中にテーブルがある。ついでに卓の上にはちょっとした料理が置いている。
話は飛んで、昼食を食べ終わったリュートさんは昼寝をすると言って部屋を出て行き、ミアさんとステラは皿を洗いに行っている。
そして、現状俺は何もする事が無いので椅子に座ってボケーっとしている。……何もする事が無いと言うか、させて貰えないの方が正しいか。
今日一日は安静に! と全員に言われ、手伝いなどはさせて貰えないのだ。しようとしても行動に移す前に終わらせているので途中からは諦めた。
という事情でボーっとすること以外に選択肢はない。
ミアさんとステラの二人が部屋に戻って来るのを外を見ながら待つ。そこから二、三十分程経ったくらいに戻って来た。二人とも重そうな物を持っている。
具体的に言うとステラは大きな水晶を、ミアさんは分厚い本を何冊か。
「……手伝おうか?」
二人とも微笑んだだけで直ぐに準備を終わらせてしまった。ステラに至ってはミアさんに手伝ってもらい、テーブルの上に水晶を置いた。
「さて、始めましょうか」
話を聞いて貰えない……。精一杯のジト目で見ても一切反応せずにミアさんは説明を続けている。それによると本は魔法についての物で水晶は自身の属性の強さを知る事が出来るらしい。曰く、「自分が使える属性の中でも得意・不得意が分かる方が良いでしょ?」だそうだ。
説得? もう完全に諦めたよ。二、三年前まではそんな事無かったのに……
「まぁ、その前に自分の魔力をある程度扱えるようにならないといけないけれどね」
その魔法を扱えるようになるには魔力を感じる必要があるのだが、【精神】の数値が高いほど感じやすいそうだ。それと魔力の扱いが上手く、繊細な制御も出来るそう。
……魔力を感じる練習を始めて三時間。自身の中に集中していると丁度、
「ミアさん……ここら辺に何か感じるんですけど」
「あら、早いわね。やっぱり精神が高いからかな」
何やらステラが目をキラキラさせているが、そもそも街一周して余裕な貴方の方がよっぽど凄いよ。ミアさんは昨日に見たステータスから納得している。
あとはその魔力を全身に巡らせるようになれば身体強化が使える様になるらしい。通常は魔力を感じられるまでに大体十日。全身に魔力を巡らせるには最悪、一年以上かかる事もあるそうだ。と言うか、リュートさんが一年弱かかったらしい。
結局、日が暮れるまでやってみたのだが魔力を感じた以上の事は無かった。ステラも魔力を感じる事は出来なかったらしく悔しそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます