心地よい朝
「ッ・・・ん・・・!?」
俺は自分の寝返りで目を覚ました。
深い眠りについていたはずなんだけど…
…腰に激痛が走って飛び起きる形になった。
俺…何かしたっけ…あぁ。
コンコン
「遥~?起きてる?」
俺の腰の激痛の決定的要因の声が聞こえてきた。
「寝てやがるよ、クソッたれが!!」
俺はいつでも怒りをぶちまけられるように枕を握りしめた。
「…開けるよ。」
俺はドアの音と同時に枕を雅樹の顔めがけて投げつけた。
ボフッ
「…ってぇ。顔に投げないでよ~。」
「お前のせいで動けないんだ!!責任取れ、バカ!!」
ふん!!俺は怒ってんだ!こんなんになるなんて思ってなかったしッ!!
「だって遥くんが求めてくるから「ダァアアアア!!うるさいッ言うな!!記憶から今すぐ抹消しとけ!!」そんな無茶な~!」
無茶もくちゃも言いたくなるしッ!!
俺はぶつくさ言いながらもにやけた顔をやめない雅樹に腹が立って、ベーって舌を出して布団にくるまった。
「遥くん…、怒らないで?」
「」
無視してやるもんッ!!
「…遥くん?」
俺は布団の中で口を真一文字にして無視を貫いてやった。
すると諦めたのか、ドアが閉まる音がした。
俺はほっとして自分で布団をはがした。
「フッ、余裕よゆッ!?」
「本当に遥くんって俺を怒らせるの上手だよね?」
そこには、俺の知ってる…冷たい目の雅樹が俺の顔をのぞいていた。
「なッ、おどかすなよ…な。」
「俺が文句言われたままで終わらせる人間だって、まだ思ってるの?」
腕だけではがしたせいで中途半端に布団がはだけていた俺に雅樹はにやっと笑った。
その意味が分からない程俺は雅樹を知らないわけではない・・・。
雅樹は俺の布団の両端を膝で踏んで、腹から動けなくなった俺の顔の横にそっと手をついた。
「…ご、ごめんなさい。」
「朝ごはん食べれそう?」
せっかく誤ったのに、素っ頓狂な答えを返した。
「…は?…あぁ。」
俺が頷くと、安心したように俺の頭を撫でた。
「ならよかった。…でも歩けないよね…。」
「は?歩けるし!ふんっ、のあ!?」
俺は体に力を入れてひょいっと立ち上がった…んだけど。
足腰がプルプルしててうまく状態を保てない…ッ?
けど、気づかれるのは癪に障るから、ベッドに片方だけつかまって平静な顔をした。
「…ブフッ!何その格好…震えてんじゃんっ!ハハハ…ッ」
かぁあっと顔に火が付いたように熱くなるのを感じた。
恥ずかしかったってこともあるけど、それ以前に…
雅樹のあの柔らかな笑顔が俺にだけ向けられていることに、優越感があった。
「もう、しょうがないな…。ちょっとごめんねっと。」
「ッ!?」
俺の体はふわっと浮き上がって、あれの横には雅樹の体がぴったりとくっついた状態に・・・って、これって…もしかしなくても…お姫様抱っこ!!??
「ちょ…お、下ろせよ!!」
「降りて歩けるの?どこにも掴まらないでも?」
雅樹は俺の選択肢をガッツリ無くしながらスタスタとリビングの椅子まで俺を運んでしまった。
「…はい、着いたよ。」
雅樹はゆっくりと俺の体から腕を抜いて、満足そうに自分の席に着いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃ、食べようか。」
「…おう。」
雅樹の作ったものがおいしいのは…高校時代からよく知ってる。
だってあの時の少しだけ残ってたおかゆを食べたときに分かったから。
…あのときはおとなしく食べてそのあとに交際を懇願すれば今が変わってたのかな…。
「…かくん?遥くん?」
「ッん?」
俺が雅樹の顔を見ると雅樹の指が俺のほっぺに突き刺さった。
「…んだよ。」
「遥くん、今何考えてたの?浮気?」
カチンッ
「はぁあ?お前のこと以外何考えるってんだよ!…あ゛。」
…もうやだ。雅樹俺のこと見て固まってるし…。
「べ、別にそういうことじゃねぇから!…その…、もし高校の時お前の告白に答えたら変わってたのかって考えた…それだけだから!!」
俺は無い言葉をどうにか連ねて話をつなげた。
「フフッ、ありがと遥くん…その言葉をもらっただけで今までが報われるよ。」
「ふん!あ、あったりまえだ!!」
あぁ、また俺って可愛くn
「遥くんって本当に…愛しい。」
「・・・!?」
雅樹といると本当に心臓に悪い気がする…。
これを毎日聞くのとか・・・心臓いくつあっても足りゃしないッ!!
「俺、ずっと遥君のとこにいるから。だからもう…俺以外の前で弱いとこ見せるの禁止ね?」
「はぁ?俺、弱いとこなんか見せてn「矢間根部長とのこと…忘れたなんて言わせないからね?」あれは…。」
文句の一つも二つも言いたいんだけど…あれは俺と部長との秘密ごとにしてるから…言わないどこう…。
今頃になって、あの時に好きすぎて困ってたなんて口が裂けても言いたいくないッ!!
「まったく…たとえ俺の為だろうと何だろうと弱みは見せないでよ?わかった?」
うぐぐ・・・。
悔しいけど…、こればっかりは…な。
言うしかないよな。
「お前が弱いとこ全部見せないようにずっと俺の前に居ればいいじゃん。」
「・・・ん!?遥くん?」
俺がむぅっとしながら顔を上げると、真っ赤になって口元の緩みを閉めようともごもごした雅樹な姿があった。
「て、照れてんじゃねぇ、ばか!…飯食べねぇなら俺貰っちゃうからッ!!」
俺は雅樹のおかずから最後のミートボールを奪ってやった。
「あ!最後まで残しといたのに!」
「残すのが悪いんだし!!取れるもんならとってみろっての!!」
俺はそれを言った直後、雅樹の口角が怪しく上がったのに気がついて、自分の失言に口に手を当てて口の中のものを飲み込んでしまった。
そうすれば、口の中に…あの妖しいものが入ってくることもないんだから。
「あ~、飲み込んじゃったんだ。じゃ、遥くんごと食べちゃおっかなぁ。」
ひぃ!!
「まだ体動かない…からッ…ん…。」
俺の唇に雅樹の唇がふれて、すぐに舌が俺の唇を這った。
チュッ
この音とともに、雅樹の顔は俺から離された。
「ごちそうさまでした。」
そういってわざとらしく雅樹は舌なめずりをしながら自分のお皿を片し始めた。
…びっくりした…。
雅樹のあの余裕そうな顔…初めて見た…かも。
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