酒酔い
居酒屋にて……
「だからぁ、お前は何で俺に引っ付いてくるわけぇ?フツー、『この人怖いぃ』って、ほかの人達に逃げてかねえか!?えぇえ??」
「先輩……酔い過ぎです……。あと、もう少しピッチを……「だまれ!だまれ!だまれー!俺の体だ、俺の自由だぁ~!!」
後輩とのお酒なんて初めてなもんだから…飲むスピードを間違えた…我ながら情けない……。
「何言ってるんですか!!……自分の体大事にしないで仕事も何もないんですからね!!」
「うぅ……。」
あげく後輩に……雅樹にそっくりの後輩に怒られてる……。
先輩の貫禄もねえじゃん……。
「……先輩は……、どうして後輩欲しいって思ったんですか?」
「え?」
「社長さんから聞いたんです。どうしても自分に後輩つけてほしいって。」
……こいつになら言ってもいいのかな…張本人だし。
「俺、入ってからずっと1番下だったんだよ…けど、社員が入るって聞いて……舞い上がってさ。」
まさかこんなに俺が子供みたいになっちゃうなんて思ってなかったけど。
「俺、情けねぇな……後輩に怒られるしさ。」
「そ、それは……」
坂井は、それから口を噤んだ。
だよな、コイツだって情けないって感じてんだろうな…。
俺は力が抜けて机に突っ伏した。
すると、腕の隙間から手が入り込んだ。
あぁ、坂井か。
坂井の手はゆっくり俺の顎を持ち上げた。
そして、
チュッ……
「……え?」
「先輩、酔いすぎです。明日の朝から会議あるじゃないですか。帰りましょ!!」
坂井は、俺の腕を引っ張って体を立たせた。
タクシーを呼んであったのか、ぐったりと乗せられて…からは俺の意識は飛んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
チュンチュン……
「……ん。」
もう朝か……確か坂井とタクシーに乗って……っ!!
ガバッ
ウォッチ、今何時?
……一大事……ウイッス……じゃねぇぇええええ!!!!!!!!!!
思いっきし寝坊じゃねえか!!!!
俺はベッドから飛び降りた……ら。
ズキッ……
「……ってぇ!!」
くそ……二日酔いかよ……。
とりあえず……会社に連絡……あれ?
今日って何曜……
ガチャ
ん?……ガチャ?今のは…ドアが開く音…だよな。
俺の焦りとは裏腹に、誰かが部屋に入ってきた。
……寝室と分かれててよかったかも。
俺、強盗に入られて死ぬ……みたいな感じか……あはは、ちょうどいいかもな……俺には。
コンコンッ
あれ、強盗ってノックするっけ……?
「先輩?起きてますか?」
ん?この声は……
「さ……かい?」
「はい、おはようございます、坂井です!!」
キーンッ
頭が……頭の芯がキーンと痛んで、ベッドのそばに座り込んだ。
バタッ
「……入りますよッ」
……今声抑えたって無駄だっつの。
ガチャ
「まだ残ってそうですね、酒。」
「悪かったな、酒弱くて……。」
「いえ……。」
坂井は俺をベッドに戻しながら答えた。
「ってか、なんで勝手に部屋入ってきてんだよ。」
俺の質問に、坂井は小さく『あっ……。』と呟いた。
「昨日、勝手に先輩のポッケ探して、鍵開けたんです。すみません。」
「そうか。」
だから、俺の部屋にいるのか。
着替えもできて……るぅ?
「お前……俺の服……」
「はい、替えましたよ~。」
ま、まさか……!!
俺は恐る恐るズボンの中を覗いた……ッ!!!!!!
着替え済んでるじゃねえか!!!!!!!!
「どうかしましたか?」
「その、俺変になってなかったか?」
って何言ってんだよ、俺!
「……。」
な、黙るなよ……。変に緊張する……。
俺、寝てるあいだに余計なこと言ったりしなかったかな……。
「いえ……。」
ホッ……。
……いえ……って言ってる割には、浮かない顔だな……おい。
「でも、軽くて心配になりましたよ。」
ん?そこは痩せてて……とか細くて……とかじゃないのか?
「……お前……俺の事持ち上げるようなことしたのか?」
「え?背中なら流しましたけど……どうかしました?」
……鈍感過ぎて、何も返せなかった。
この時は俺自体、俺のことがわかっていなかったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます