同じじゃない日
レクル
雪
今年の2月の始めの方の事だったと思う。窓の外を見たら雪が積もっていた。あまり嬉しくなさそうな家族とは対照的に、とても興奮したのを覚えている。
直ぐにでも雪だるまを作りたくなったのだが、風邪をひいた体が言う事を聞かない。薬を飲んだ事も影響してか、酷い睡魔に襲われた。次に起きたときにはもう外は暗くなっていた。夕飯の時間だと呼ばれたが、雪の事が気になって仕方が無かった。すぐに外の様子を確認したら、まだ少し雪が残っていた。嬉しくなって手袋を探してブーツを借りて外に出た。吐いた息が白くてとても寒かった。でもそんな事が気にならない位ワクワクした。出来るだけ雪を踏まないように気をつけながら進み、積もっている雪を掴もうとしたが、とても硬い。寝ている間に一度溶けてまた固まったのだろう。フワフワしているのを想像していたので少し悲しくなったが、寝ていた自分が悪いのだから仕方が無い。誰かが通った足跡の上を踏みながら、硬くない雪を探して雪だるまを作った。家の玄関に飾ろうと思い、不格好な雪だるまを持って帰っていると妹が走ってきた。自分も雪で遊びたくなったのだろう。硬くない部分を教えてあげると妹も遊び始めた。その時に妹がつららを見つけたので雪だるまに付けてあげると、より雪だるまらしくなった。陽が当たらなさそうな場所を選んで雪だるまを飾って急いで家の中に入った。テーブルに並んだご飯はとっても温かくて、いつもより美味しく感じた。ご飯を食べながら家族に雪だるまを自慢した。完成してすぐに撮った写真を見せては誇らしげに思った。綺麗な丸を作れず歪な形で、つららも今にも落ちそうで不格好だったが、それで充分だった。
次の日、雪だるまを見に行ったが、昨日のあの不格好な雪だるまは余計不格好になって、体は土で汚れていた。数時間で全て溶けてしまうだろう。雪だるまの上の方を掴んで家の中に持ち帰り、すぐにラップで包んで冷凍庫に入れた。でもそれでは誰かに捨てられてしまいそうなので、もう使わないタッパーを母から貰ってその上にテープを貼って「ゆき」と書いた。これで捨てられる事はないだろう。その「ゆき」は3ヶ月経った今も、あの時の楽しかった気持ちと一緒に冷凍庫の中に眠っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます