10-4


 午後4時10分位にはメンテ中だった筺体が復旧し、何とか混雑は緩和されたようでもある。

全店で同じような症状が発生したというネット情報もあるが、それが真実なのかは分からない。

草加店ではメンテをしているのは事実だったし、それ以外でも筺体の修理をしている情報は事実だった。

それを大げさに拡散し、ネットを炎上させようと言う勢力がいる限り――正常なコンテンツ流通は出来ないと考えている人物は――いるだろう。

(的確な判断で行動すれば――最悪のケースは防げるだろう)

 相変わらず店内のボウリング受付にあるカメラモニター映像をチェックしているタチバナ――。

彼が最悪と想定しているのはネット炎上である。それ以外のケースは最悪と言うよりは、発生するべきではないケースだろう。

考えていない訳ではないのだが、今のタイミングで周囲に言及したとしても下手に恐怖を煽るのと全く変わらない為――言わない方が良いと考えているのかもしれない。

(しかし、我々としては客が怪我をするような事態だけは――)

 その一方で、昨今問題されている説明を読まずにプレイして怪我をするようなプレイに関し、警鐘を鳴らす為に何がよいのか考えている。

それが杞憂で終わればいいのだが――。

 それから閉店まで、特に大きなトラブルもなく――無事にゲームスペースは一部を除いて電源を落とした。

電源が落とされたのは深夜0時までのスペースで、ボウリング受付の方はサラリーマンやOLと言った夕方では見かけないような客層を見かけるようになる。

そうした客がプレイするゲームもプライズゲーム等で、リズムゲームVSをプレイするような客はいなかったのだが。



 5月7日、この日は小雨気味の天気である。何故か『オケアノス・ワン』草加店の駐輪スペースは混雑していた。

駐輪スペースは乱雑になっていた時期と比べると、自転車が整頓されているように見える。この辺りは啓発活動等よりは、バーチャルゲーマーの進出が大きい。

何故かと言うと、彼らのプレイスタイルは――他の『デミゲーマー』とされているプレイヤーよりも。

(なるほど――そう言う事か)

 周囲の環境が変化する事に対し、ビスマルクは別の印象を抱いた。

他のプレイヤーが真似ているからではなく――自分自身で過ちに気付く事の方が、正しい道なのではないか――と。

【最近はデミゲーマーのレッテル貼りや炎上を目的としたサイトが減っているな】

【アフィリエイト収益が得られないと判断して撤退したか、それとも――】

【しかし、炎上系ブログはどのような話題でも取り扱うのでは?】

【事情が複雑な政治関係や海外情勢は取り扱うサイトがない――規制が怖いという意味ではなく】

【まとめサイトが一種の火事場泥棒や戦争屋みたいなポジションだという風評被害を防ぐ意味合いだろうな】

【戦争屋? そこまでのレベルなのか?】

【そう決めつけているのは少数だが、何処かからルート不明な資金がまとめサイトに流れているという話も――掲示板で見かけるな】

【WEB小説のフィクションではなくて?】

【これがフィクションと信じたいのは、誰もが一緒だ】

 ビスマルクが見ていた一連のつぶやきログ、そこではデミゲーマーの話題が既に賞味期限を切れている事を物語る書き込みがあった。

だからこそ、彼らは次のターゲットを探し始めているのだ――と。



 連休明けなのだが、村雨(むらさめ)ムラマサの自宅兼動画配信スペースでは、連休明けも関係なく客足が途切れない。

基本的には予約制としているのだが、特に予約が少ない平日や連休明けは予約していない動画投稿者でも来店可能な形にはなっている。

(やっぱり、期間限定でもバイトを雇うべきかなぁ……)

 相変わらずのジャージの上下で店番をやっているムラマサだが、退屈な表情ではない。

最近になってリズムゲームVSを扱うゲーセンが出てきたので、そちらへ出向いてプレイする事は可能になった。

それでも――ここからは徒歩5分位と言う距離だが。自転車ならば、信号次第では2分もかからないだろう。

(バイトを雇うよりも筺体そのもの――は無理かな)

 相変わらずのカップラーメン生活ではないが、今の時間だとおかかのおにぎりを食べている。

コンビニで購入した物なので、ワンタッチで――という物ではあるのだが。

筺体そのものを買うにしても数百万単位のお金は飛ぶだろう。近年は回線のレンタル料のみで筺体は百万円未満で――と言うケースだってある。

それでも、そうした筺体を個人宅で扱うのは不可能に近い。何故かと言うと、こうした筺体はゲーセン等の専門店限定である事が多いからだ。

ムラサメの場合は動画配信スペースなので、事情を説明すれば入荷できる可能性はあるかもしれないが。

「ここからが――反撃の狼煙(ターン)となるだろう」

 ムラマサの目つきは、ジャージの上下ではある物の――鋭い目つきに変化していた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る