世界樹の守護者
ふわる
プロローグ
この世界は世界樹によって護られている。
長き神々の闘いが終わりを迎えようやく人界に訪れた平和を護りどれくらいの月日…
いや、何世紀が立ったのだろうか。
だが…
「この世界は腐ってしまった…なぁ…そうは思わないか?」
ただ静かに聳える世界樹に指先を触れる。
だが次の瞬間、青い光によって弾かれてしまった。
「それ以上、世界樹に触れるな。」
魔力を放った手は震えゆっくりと腹部を押える。
痛みで女の顔が歪んでいるのが遠くからでもよく見える。
「その傷では俺を仕留められないな。」
「うるさい…それでもお前みたいな奴から世界樹を護るんだ!!」
突き出した手に魔力を集める。
だが、放つ寸前に女を呼び止める声が響き渡る。
「ダメだよグリー!それ以上戦ったら身体が消滅してしまう!!」
一瞬生まれた隙を俺は見逃さなかった。
再び世界樹に触れ言い放った。
「樹に眠りし終末の運命よ形になりて現れろ…ラグナロク。」
雲が黒く覆われ雷鳴が響き世界樹が…
「世界樹が枯れていく…」
ラグナロク…それは免れぬ絶対の運命。
その力を完全に解放したら世界の終末の日を迎える事となる。
「フィアラル……逃げろ…」
「あ…」
男の手の中に集まっていく闇がだんだんと形になりつつあった。
「よく聞け…人界に降りて探すんだ。神に与えられた力を持つ人の子を!」
「でも、グリーはどうするの!?」
こんな絶望的な時でもグリーはイタズラっぽく笑っていた。
「自分の事は自分で何とかできるさ。」
だからもう行け…と、肩を押された。
ぐっと涙を堪えて空に羽ばたいた。
人界に向かって下へ下へ…その途中あんなに黒く覆われていた雲に光が射して
ぱっと雲が晴れていった。
きっとグリーだ…グリーが命を懸けて世界の終末を延ばしたんだ。
「きっと見つけ出すから。神に与えられた力を持つ人の子を。」
世界樹の守護者 ふわる @fuwaru
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