ナデシコピンク

カゲトモ

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「もう私、先輩のこと押し倒しちゃおうかな」

「っ」

 ぶっ、と吹き出しそうになってしまったコーヒーをどうにかこうにか喉の奥へと流し込む。

 おいおい、昼間っから何言ってんだい、女子高生が。

「だって全然全然私のこと見てくれないんだもん」

 つい意味もなくカウンターの上をお手拭きで拭いてしまう。別に彼女たちの方に顔を向けている訳でもないし、傍から見ればただカウンターでコーヒーを飲んでいるだけの男に見えるんだろうけど、なんとなく手持無沙汰だと彼女たちの会話を聞いているのがばれてしまいそうで。いや、別に聞き耳立てているわけじゃないけどね! 勝手に耳に入って来るだけだしね! 第一、俺の方が先にここに座っていたしね! なんて。

「私ってそんなにダメかな?」

 どうやら二人組の女子高生(さっきチラッと見えた)の片方が先輩に片想いをしているらしい。部活の先輩、とかいう青春感あふれる片想いだ。どっちの女の子かは分からないけど。

「うーんそうだねぇ、ダメじゃないだろうけど・・・」

「けど?」

 ・・・けど?

「あんたチンチクリンだからねぇ」

 ぶっ。

「ちょっひどくないッ!? それッ!」

 驚愕のセリフの後に「あはははは」と声が続く。なんて酷い愛あるディスりなんだ。

「確かに背は低いけど」

「胸もないし」

「足も短いしね」

「胴は長いんだけどね」 

 それ短足ってことだよね?

「自分でもチンチクリンだって分かっているんだけどさ。あんなにカッコいい先輩には釣合わない事も分かっているけどね」

「カッコいいって、あれはただ長身ってだけでしょ」

「スラッと背が高いのがいいんじゃないの」

「まぁそれをカッコいいって思うかどうかは人それぞれだけど」

「いいのッ。私だけがカッコいいって思ってたらそれでいいのッ」

 うーん、恋する乙女だねぇ。

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