昔々の始まり

 僕がまだ、今より都会に住んでいて、カラス達のリーダーをしていた頃。


「あ、カラスだー!」


「あっちいけー!」


 キャハハハハ……


 道端を歩いていたら、無邪気な子供の声と共に、石を投げられた。

 僕が住んでいた街は、異常なカラス嫌いが進行していて、僕たちを見て返される反応は決まっていた。

 逃げて行くか、下卑た笑いをして、石を投げられるか。

 とても行きづらい世の中だった。


 でも、君は違ったんだ。


 僕を見ても、逃げることも、石を投げることもしなくて、ただ、隣にいただけだった


 その街にある神社。その石段に、僕はとまっていた。


「あ……、カラス」

 僕は声のした方を向く。

 見ると、小学生ぐらいの女の子がいた。赤いランドセルを背負って、髪をおさげにしていて、買い物袋を、右手にさげて。

 何もしてこない。石を投げることもなく、逃げることもなく、ただ僕を見ていた。

 訳がわからない。僕は、翼を広げ、威嚇をした。でも、君はさ、言ったんだ。


「おもしろーい」

 ってさ。


 君は、ただ、それだけ言って、僕の隣に座った。


「食べる?」


 君は、そう言って、買い物袋から、林檎を取り出した。

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