ひっさびさにアニメを見たら、名作でした。

と言うわけでせっかくなのでご紹介します。昨年10月から今年の春ごろまで放送されたアニメ「風が強く吹いている」です。

原作は三浦しをんの同名小説です。ほぼ素人だらけの大学生達がいきなり箱根駅伝を目指すと言う愉快痛快な話で、「そんなバナナ」とあらすじを見て本を手に取りましたが、読むうちに箱根出場も納得させられてしまうドラマと面白さがありました。

アニメ自体を普段ほとんど見ていない事と原作を先に知っていた事から、アニメ化を聞いた当初は懐疑的でした。原作が良くても映像化で失敗した数多のあるあるパターンを知っていますし、最近のアニメを知らないので画風など昨今のアニメ事情についていけるかなと思ったのです。ですが実際の画像を見てそんな心配は杞憂でした。

スポーツアニメが成功するかどうか一番大きなポイントは、そのスポーツの動きをいかにリアルに再現できるかかと思いますが、今回のアニメを作った制作会社プロダクションI.Gは人間のリアルな動きに定評があり、実際その通りでした。キャラクター達が走る姿が本当にリアルで実写のよう。制作会社のインタビュー記事によると、アニメで「走る描写」と言うのは本当に大変なのだそうです。ただなんとなくで描くとおかしな動きになってしまうとか。おそらく大学の駅伝部などプロフェッショナルの「走り」を数多く取材し勉強したのだと思いますが、その取材とデッサン力で出来上がった作品ではアニメのキャラクター達が２次元という平面の世界でも不自然さを感じさせず、まるで現実の３次元にいるかのようにリアルな動きで走っています。各キャラクターの走行フォームにもこだわりが見られ、長距離走経験者で強い走者はフォームが美しく足取りが軽く飛ぶように、初心者で体力がなく遅い走者は無駄な動きが多く、本来長距離走には向かない体格の良い走者は駆ける一歩一歩が重そう、など細部までこだわりが見られます。

変に萌えキャラにデザインされないかなと思っていたキャラクターデザインも、元々原作がある事もあり、デフォルメされすぎず親しみやすい見た目になっていましたので「ありえない髪形や髪色、胸が大きすぎるしプロポーションがありえない女の子などいかにもアニメ！な画風が苦手な人（作風によってはそれが良い事もあるのですが）」や、普段アニメを見ない方、アニメとしてはどちらかと言えば落ち着いたストーリー展開なので大人の方には特にお勧めです。内容は箱根駅伝の為、箱根駅伝が好きな方にはもちろん勧めます。本番の箱根駅伝コースは実写かと見まがうほどの再現力で背景も必見の価値ありです。

個人的にお勧めなのは、走らない、箱根駅伝なんて出れるわけがないと思っていたキャラクター達がどうして走る事にしたのかという、各個人の「走る理由」。キャラクターによって徐々に明かされたり、本番で走っている時に独白によって判る等しますが、単に走るだけではなく、個人個人の人生観にも繋がっていてまたそれが非常に共感でき、うるっとさせられるんですよ。走る事は生きる事と似ている事、答えを求めみな走っていく＿＿。原作ではかなりページを割いて書かれていますが、おすすめは一番一般人に近い感覚のキャラクター「キング」の独白です。アニメでも出てきますのでお見逃しなく。

ワンピースやドラゴンボールなどのバトル物や、派手な技や演出のスポーツアニメしか見たことのない方には少し戸惑いがあるかもしれません。必殺技や強敵などわかりやすいアイテムがあるわけではなく、テーマも駅伝で、しかも原作もアニメも走りにアニメ的デフォルメを入れないため見た目は非常に地味です。ストーリーも他のスポーツアニメに比べると、わかりやすく勝ち上がっていく高校野球などのような対ライバルとの見せ場があるわけでもなし、バスケットボールのような華やかなプレーや速さを見せられるわけでもなし地味でしょう。

ですがキャラクター一人一人の個性と感情、走りを丁寧に描いているので、見た目は地味でも引き込まれるんですよ。派手なアニメしか見た事がなかった方にも見ていただきたいです。

と言うわけで、アニメを見てみたら丁寧な作りで原作イメージを損なわず良い出来になっていました。知らない方は多いと思いますが隠れた名作です。

なんだか話を聞いていると見た事ないけど見たくなったなあ、なんてそこの貴方！「風が強く吹いている」が年末一挙放送されます。

日本TVでダイジェストが12/28 26:25~、19話～21話が12/29 26:20~、22話～23話が12/30 26:59~　です。おそらく最後の４話以外は短くまとめられていると思うので、全編をさらっとさらうには却って見やすいと思います。大人も楽しめる良質アニメです！ぜひ見てみてください。