俺の新しい仲間が明らかに挙動不審なんだが。

七条ミル

(1)出会い

 俺は名をヴァルターと言って、この街ではそこそこ名の知れた剣士だ。

 自分で言うのもなんだが、結構強いと思っている。思っているだけで、実際のところどうであるかは知らない。

 そして今俺が居るのは、今まで苦難をともにしてきた二人の仲間の結婚式。

 全く、白状な奴らだ。俺が静かに寝息を立ててる横できっと盛ってたんだろうな。何を、とは言わないが。

 なんだか面倒になって、ぼけーっと二人がケーキに刀を入れるところを見ながら、次誰を仲間にするか考える。

 誰か酒場にいい奴は居るだろうか。いまどきこの街で売れ残りなんていないだろうし、それこそ男なんてほとんどいないだろう。

 なんでもいいが、はやくこの結婚式を抜け出したい。前で照れながらイチャイチャしているかつてのたちは、俺に構う様子もない。

 まあ、どうでもいい。とりあえず、終わったら速攻酒場へ出かけて、仲間を探すとするか。

 確かにそこまで期待できないが、一人より二人のほうがマシだろう。圧倒的に。


 結婚式が終わり、俺はレンガで舗装された街の道路を歩く。横を馬車が行ったり来たりしている。中には、馬で荷車にモンスターを載せて引っ張ってるなんてのもある。全く、この街は正直よくわからない。俺がいた故郷では、壁の外に行く人間なんぞまず居なかったし、とても退屈だった。なんとなく運動神経のよかったおかげで、今ではそこそこ強いモンスターとも対等に渡り合えるようになった。

 漸く酒場の入り口が見えてきた。酒場と言っても、ギルドとほぼ同義で、クエストの受注やらなんやらもやっている。酒場のほうがメインなので、別に冒険者だとかそういうのじゃなくても、安酒を大量に飲んだりもできる。

 適当に大量にはってある張り紙の中からめぼしいものを探し出す。

『職:冒険者 名前:シュガーかずマ』

とかいうかなり危ない名前の奴も居るが、それは一切関係なく、俺が手に取ったのは、

『職:魔法使い 名前:アカリ』

と書かれたものだ。カウンターのめっちゃおっぱいの大きなお姉さんに手渡す。

「はーい、アカリくんですね~。アカリく~ん! 出番よ~!」

お姉さんがそう呼ぶと、奥のほうから小柄な少年が出てきた。黒っぽいズボンにこれまた黒い半袖のシャツ、それにとんがり帽子をちょこんと乗せている。腕は細く、その細さに不似合いな大きな杖を手に持っている。男にしては顔がどこか幼げで、単刀直入に言えば女のような顔をしている。

「えっと、ボクはアカリです。うーんと、魔法使いやってます。」

そんな感じのザックリとした自己紹介が投げられたので、俺も適当に返した。

「よろしくおねがいします! ヴァルターさん!」

なんとも、細くて頼りなさそうな奴だが、どうやら魔法の腕は確からしい。あまり足は速くないそうだが、俺もそれなりに身長があるほうだと思う。適当に背負えばなんとかなるだろう。

「あと、敬語はくすぐってぇからやめてくれ。それから、ヴァルターでいい。」

そう言って、とりあえず適当なクエストを選んで例の居乳お姉さんに差し出す。

「はい、受諾しました。それでは、いってらっしゃーい!」

というわけで、俺ら二人のたびは始まった。

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