大陸の主たる国々

◎ 地理と風土

 大陸中央から北東にオンブリア、北西部は海に面する。南に人間の新興国アエディクラ帝国、東に同イーゼンテルレ公国。

 オンブリアの西部は、ニザラン先住民自治領ディストリクトと呼ばれる。竜族の国の一部ではあるが、先住民エルフと呼ばれる種族が暮らす地区。


・気候:

 寒冷な土地で、寒さに強く小食でも平気な竜族の住む地。魚をよく食べ、小麦が主食。農業不適地もあるものの、天候をつかさどる白竜の恵みによって、王国と王政を維持できる収穫を得ているようだ。火山があり、温泉がある。資源豊富で住みやすいというわけではないが、自然が美しい土地。

 火山活動が活発であり、前進後退を繰りかえす氷河が高地を侵食し、渓谷を流れる川が大量の沈泥シルトを低地へ運んでいる。そのため、国土は若く肥沃な土壌におおわれている。上から見ると、破れの多いレース地みたいにあちこちに湖があり、国境線は海に浸食されている。首都はタマリス。


・文明

 大陸のなかで、文明的にはオンブリアはかなり遅れていて、書籍は少なくて吟遊詩人がいるような文化。識字率も低い。寿命が長いので口頭伝承で事足りる背景がある。


・首都近郊

 英雄王カウリオドスの冠と呼ばれる外輪山と火山性の湖からなる王都タマリス。山は冠にはまった宝石に見立てられ、中央火口丘のもっとも高い山は「金剛山」、王城があるのは「白金山」。玉髄、緑柱、藍晶、水晶、瑪瑙なども地名に用いられている。

 非常に高い位置にあるため、王城の通称は掬星城きくせいじょう(=星がすくえるほど近い)という。その背後にはトーア山という火山がある。トーアとは古い言葉で「御座所」という意味で、城の本体は実はここ。竜祖が今も棲むとされている。数々の宗教施設があり、「御座所」があるのもここ。また、その影響で、掬星城付近は温泉が豊富にあり、城内にも多数の温泉施設がある。



■アエディクラ

 かつてオンブリアの南部に位置していた巨大な人間の帝国イティージエン。その帝国が、竜王エリサによって滅ぼされたのち分割してできた王国のひとつが、アエディクラである。

 旧イティージエンはオンブリアより温暖で肥沃、古くから穀倉地帯として栄えるが多民族の侵略も多く、複雑で豊かな文化をはぐくんできた。その流れをくむアエディクラは、厳格な一神教と自由闊達な学問が両立する不思議な国。大きな港がある開放的な文明都市で、母国の腐敗した貴族制度や懶惰な文化に反対する神官、学者たちが中心となって官僚制度を作った。また「塔」と呼ばれる独特の学者組織があり、大陸中に知識人としての学者を派遣している。(リアナの家庭教師、サラートはここに留学していた)

 物語開始時の君主は、ガエネイス王。先見の明のある大陸南部の覇者である。


■イーゼンテルレ大公国

 イティージエンより分裂したもうひとつの国家。亡命貴族たちの作った最初の年国家であったため、アエディクラよりもイティージエンの文化を色濃く残している。そのせいか、官僚制が形骸化して腐敗が横行している。アエディクラと同じ一神教だが、厳格ではない。


 イーゼンテルレは、竜を小型化・家畜化した生き物「矮竜わいりゅう」を生み出している。汎用性は高いが兵器としては軽量にすぎあまり実用的でないので、アエディクラは古竜を使役したいと狙っている。(ちなみに、竜族はあらゆる竜を使役できるが、家畜化はしていない) 


■ニザラン先住民自治領ディストリクト

 竜族、人間につづく第三の勢力を、大陸では「妖精」と呼びならわしている。

 オンブリアの創世記では、竜祖ガハムレイオンが打ち破った原住民であるとされるが、その種族・生態には謎が多い。妖精の国ニザランはオンブリア内の自治領となっており、形式上は竜王に恭順している。

 

 大陸西部の温暖湿潤な森林地帯に自治領をもつ。ハイヴと呼ばれる小単位で生活し、「夏の王」「冬の王」「鉄の王」の三人の君主がいる。が、その権威は外部にはわかりづらい複雑なバランスで成り立っている。

 かつて、妖精国は季節やイベントによって王を立てていた。その期間限りの祭祀王のような位置づけで、その名の通り夏には「夏の王」、冬には「冬の王」が立つ。そして戦争が始まると「鉄の王」を立てる。奇妙なことに、彼らは自分の王を妖精ではなく、妖精となることを了承した人間や竜族から選ぶ。

 殺戮を好まない特性から存続の危機にあったが、「くろがねの妖精王」が帰還し、人間の国を退けているという。彼らも人間と同様、マスケット銃などの近代兵器を使うことから、竜族のなかにも導入すべきとの意見が出てきた。

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